いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2012年11月27日火曜日

【かもかて小ネタ】まだ白色のオルテンシア

【 注 意 】
・タナッセ友情A後、印愛MAX好愛キャップMAX
・未告白、しかしそろそろ一杯いっぱいなヤンデレ一歩手前主人公





 土と、草の匂いがする。
 花は咲いてるけど、あんまり分からない。
 土は、ほこりの臭いをぎゅっときつくして、他のにおいも混ぜたらこうなんだろうなってからだ全部をつつむ匂い。
 草は、野草のスープをお腹いっぱい食べたあと、げっぷしたらこんな風になるだろうってからだの中を満たす匂い。
 僕は雑草を抜かれて上の方だけやわらかい土にしゃがんで、一緒に抜かれてしまった小さな花を見てる。
 花の香りは、全部から隠れてた。
「おい、……おい起きろ、こんなところで眠るな」
 花の代わりに届くのは、嗅ぎ慣れた心落ち着くお香。正確には、お香とそのひとの匂いが混じり合ったこの世に一つだけの、
「……あー…………うん?」
 そこではっきり目が覚める。いつの間にか開いていた目は、心配に眉根を寄せたタナッセの姿を捉えていた。繊細さと華やかさを兼ね備えたリリアノ似の面立ちは存外睫毛が長く、私は手を伸ばして目元にそっと触れる。頬を撫でる。おい、と心配から困惑に響きを変えて彼は吐息した。私の右手を彼の左手が浅く掴んで、目覚めと同じ言葉を口にした。
「おき、……起きろ」
 うんおはようもう起きてるけど。私は何を言ってるんだあなたはという口調で丸まっていた背を正し、空を見上げる。広がるのは木々の緑とその向こうの灰空、あるいは降る雫。顔を戻すと不満げなタナッセが雨よけに被っていたフードを肩に落として横に座り、私の手は離されてしまった。女性を選択した私より骨張って、しかし長い指先は、冷えた手には熱くすら感じられていたから、いっそう自分の冷えが気に掛かる。
「侍従が探していたぞ。……全く、全く莫迦かお前は。念のためと無駄足覚悟で来たというのに、何故本当に安穏と眠っているのだ。大人になったのだから慎みを持て、大体お前は女性を選んだのだから、そもそもの話として、人気のない場所は避けろと……王であるヴァイルならともかくだな、どんな浅慮を誰が起こすか……ああ、いい、いや、とにかく改めろ、帰るぞ」
 口を挟まず黙って彼の声を耳の奥で響かせていたら、座ったばかりの彼はけれど言うなり立ち上がった。私は残念を覚える。雨の日だから彼が来ないかとここで待って、待ち疲れて眠って、夢を見て――あれは過去の夢だろうか。もしそうなら、立っても座っても異様に低い視点だったから相当小さい頃の記憶なのだろうが、とにかく、私は酷く寂しくなってしまった。タナッセがわざわざ探しに来てくれた今も、何か悄然とした気持ちが抜けない。……今よりもっと心配して――気にかけてもらえる、といった意味では彼が言いかけたようなことになってしまっても構わないだろうか、と血迷った考えがよぎる辺り、本当に落ち込みが強いのか。
 雨が巻き上げる土の匂いと、水を受ける緑の匂い。彼の香りは全てにかき消され、離れてしまえば私には届かなかった。










 まだ白色のオルテンシア










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しろいろ、でも、はくしょく、でも。

1.告白する→玉砕&ゴタゴタ
2.誰ぞに浅慮を起こされる
 →色んな意味でこども気分が抜けきらなかった当然の帰結
3.隠し持ったナイフで……→安定の反転コース
選択肢は三つ。

……ダイナシズム炸裂な選択肢として、
頭打って記憶喪失になった主人公か(orが)タナッセがだな……。