いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2023年7月19日水曜日

【かもかてSS】永遠のドロレス

【 注 意 】
・現代パラレル、ほぼ描写はないが一応成人向け
・タナッセといっしょ/春 タナッセが権利を預けられて溺れる(性的に)


 しゅっしゅ、と窓辺の植物に霧状の水が吹きかけられる。
 エプロンドレス姿の小柄は一通り作業を終えると満足そうに小首を傾げて微笑んだ。
 ……自分が選んだ服を恋人が着ている、というのは面映ゆい。
 きっかけがきっかけなので余計に。
 タナッセは彼女の淹れてくれた紅茶をすすりながら、抱くことを我慢しきれなかった事実に苦みを感じていた。
 が、もう扇情的な短い丈のスカートを穿かずにいてくれることや、それ以降彼女によく似合う上男避けにもなると悩んで悩んで選び抜いたセミオーダーの服を嬉しそうに身につけてくれることはとにかく甘ったるく、ちょうどいいアクセントにしかなっていない気もした。
 普通に大きい程度だった胸も関係を結んでからすくすく成長していて、言い知れない満足感をも得てしまっている。
 タナッセの選んだ可愛らしい服に包まれた幼さの残る顔立ちの娘は、しかし当の彼自身の手でその身体をはしたなく華開かせられている。
 満足感とはまとめてみたが、その内実は黒い。たとえば、支配欲とか、独占欲とか。賢く世間ずれしているくせに無垢で純真な恋人に聞かせたくない種類の感情だという自覚はあった。自覚したくない感情でもあった。
 先日、屋敷へ戻った際出くわしたユリリエに、
「あなたがああいったデザインを選ぶのは、正直、意外だったわね」
と話しかけられた。何が意外なのか。見透かすような据え目は言葉を裏切っていた。
 考えている彼の横に、いつの間にか恋人が座っている。正座をやや外側に崩した形で両手は太ももの間、やや前のめりの体勢でタナッセをじっと見上げて桜色の唇が開く。ユリリエが。
「……何故そこであいつの名前が出るんだ」
 少女は二、三度またたいてのち、ユリリエのことを考えていたのかと問い返してくる。反射的にあれこれ言いそうになったのをどうにか抑え短く肯定すると、シンクロニシティなのだろうかと平和な返事がやってきた。
「で、ユリリエがなんなんだ」
 促して聞こえてきた文言に結局タナッセは唇をひん曲げる羽目になる。
 曰く、この服を決めたのは私なのかと問われたからあなただと答えたら、趣味が変わったのかしらねいえ変わってはいませんわねふふと笑われたのだと。
 やや上目に黒目が彼を映し込む。意味は明白だった。
「お前も知っての通り、私はあまり装飾的な衣服は好まない。だが好んでいないのは自分についてだけで、別に他人……他の人間が飾り付けているのは気にしないし、ほら、何も変わっていないということだ」
 わざわざあの従兄がタナッセにまで声をかけてきたのだ。それで終わった会話ではないが、幸い恋人は意味深に笑ったユリリエしか知らない。
「まあ、その、お前ならあのカタログの中のどんな服でも着こなしたとは思うが……」
 着飾ることが好きなユリリエともまた違うラインナップで――と言ってもまじまじ見た試しはない――全体的にクラシカルで甘い世界観のそれと、対外的な彼女の怜悧さに合わせたもう少し大人びたそれの二冊だった。いずれにせよ少女めいた代物ばかり選ばれていた。
 どうもあの仕立屋は頭がハレの日めいた格好にばかり仕上げようとしてくるが、さすがにプロらしく方向性は常に相違ない。必ず合う物を提示する。夢見るような眼差しの、小さく華奢な身体。そこにはやわらかなこどもの心が詰まっている。タナッセは、それをよく知っている。
「あ……」
 恋人のおとがいを手指で固定し、唇を寄せた。褒められたことで無防備だった彼女の唇は、絡められる舌もそのまま赦し受け容れる。ソファに押し倒せば幸せそうに頬を緩めた。
 可愛いと、そう思う。大切だとも。
 それらと同じくらいそそられるし、自分だけの少女にしたかった。
 全く、ユリリエの揶揄いを笑えない。
 一つ問題があると言えばあったが。
 肝心の可愛いかわいい恋人は、好きな人に選んで貰った服を好きな人が脱がせてくれるのはとてもいやらしくて素敵、と言い放つなかなかいい性格の持ち主だったのである。
 まあ、そうでもなければタナッセと連れ添ってくれるはずもない。甘んじて受け止めるしかなかった。
 しかしユリリエが彼女にあまり突っ込んで話さずいてくれて助かったと彼は感謝する。
 少女は見た目がかなりつけ込まれやすいこともあり、そんな彼女に向けられる男達の下劣な眼差しにはずっと苛立っていたものだが、服を選ぶことになる少し前、極端に少女趣味な衣服は男達の関心を減退させると見聞きしたのだ。合う合わないで言えば確実に似合っていたし、彼女の趣味からもそう外れない。幸甚、僥倖、そんな単語を思い浮かべながら彼はひたすらフリルとレースの甘い世界を提案したのだ。
 それを、ユリリエははっきり見抜いてきた。笑顔で言い当てられた。
 何故分かるのかと問いそうになり、それは肯定でしかないと飲み込み、わざわざ言いに来た魂胆に踏み込みそうになり、それも墓穴になると口を閉ざし――結果、口から出たのは「な……むぇっ、ぐ……」という原形を留めない音の羅列だった。無様だと自分でも感じた。
「あなたは相変わらずお莫迦さんなままだけれど、前よりはずっと見ていて安心出来るようになったわ。莫迦そのものは不治でしょうけれど、方向がこうも変わることがあるとはね。あの方によく感謝なさい」
 不思議なことに、珍しくユリリエは言葉に詰まった彼を弄るでなく機嫌も良さそうにころころ笑うだけで終わらせた。身構えていた彼は肩透かしを食らった気になる。後からヴァイルに聞いて知ったが、他家への顔出しの一環として屋敷に訪れていただけで、時間がなかったらしい。……それでもいちいち声をかけてくるユリリエにはやはり苦手意識が募る。
「ね、ねえ……」
 ユリリエが言うところの莫迦を受け容れてくれる少女が、甘い声のさなかに声をかけてきた。
 いつも言っているけれど私もあなたに触ったりしたい。私だけ色々して貰って違う気がする。
 舌と指で刺激していた赤い花芽から舌を離し、タナッセは首を振った。
「してやっている訳じゃない」
 言いながら挟んでいた手指の力を強くすると、嬌声と共に背が弓なりに反り、元々溢れていた花蜜がまた奥から量を増して甘い香りを振りまく。荒い息を零す少女の顔をのぞき込めば耳まで熟れた色に染まり、半開きな唇と相まって舌でなぶり歯を立てたい気にさえなってくる。うっすら浮かんだ涙すらすすってしまいたい。
「……くそ」
 思わず悪態が漏れた。
 別に彼女からの愛撫を拒んでいるのではない。手指で胸で口で触れられたが最後、まるで奉仕させるかのように押しつけてしまいそうな自分を薄々感じているから、出来ないのだ。今でさえ小さな身体に見合った小さな蜜穴しかない少女に押し入れてしまいたく思っているのに。何度も絶頂させて、泉のように蜜を溢れさせる穴を舌や指で丁寧にほぐしてやって、と優しくしたいのに。
 なのに、我を取り戻した恋人が腰をくねらせて請うてくる。
 早く挿れて欲しい、我慢出来ない、と。
 初めての時、ちゃんと飲んでいるから付けたりしないでそのままして、と言われた時もそうしてしまったし、熱く潤んだ眼差しで真っ直ぐ見つめてくるのは本当にやめて欲しかった。
 堪えてまだ駄目だ、と返したら今までになくぐずぐずしだしたからもういけない。タナッセが選んでくれた服だと、前より気持ち良くなりやすくてたまらない、ずっと中がむずむずしていて辛い、意地悪しないで欲しい。
 両腕を彼に伸ばし、五指を広げて彼を求める姿にまた悪態が口をつく。
「お前は、本当にお前は……っ!」
 白のオーバーニーソックスを抱え、ほとんど衝動のまま奥まで味わう。
 勢いに少女は眉根を寄せたがそれも繰り返される律動に意味を変えていくのが見て取れた。何より快楽に咽ぶ声の合間に、これが欲しかった、激しいのが嬉しい、あなたから強くされるのならいくらでも構わない、と聞こえてきては、止める理由もなくなってしまった。
 出会ってすぐの頃も、今も、少女はタナッセを煽ることにかけては巧みだ。あの刺付いた言動が今や甘く円やかになり、拒絶が受容になったという変化はあれど、彼の心を揺さぶる事実は変わらない。
 真白い感覚がそこまで来ている。少女の太ももを更に押し込んでタナッセは桜色の唇を捉えた。舌で割って入り、同じものを求め、むさぼりながら腰を振りたくる。彼女は真実同じヒトという存在であるのか。疑問する程甘やかな感触を口と下肢に受けながら、彼は恋人の中に精を放った。
 
 
 
 
 
 シャワーを浴びてひと心地付いたのも束の間、エプロンドレスを着直した少女がソファーの上のタナッセの脚の間に収まった。
 とは言っても彼を向いてはおらず、彼に背を預ける体勢だ。
 ちょうどエプロンドレスの脇から手を差し込み、ボタンを一つ外せば彼が育てた柔らかい感触を堪能出来るだろうと考えてしまうのは、まだ行為の残滓が残っているせいだろう。全く本能だけの動物でもあるまいに、と内心嘆息するしかない。ただ、恋人は彼からのそういう扱いを喜びそうなので、一応思いつきを覚えておこうとは思った。初めての時、彼には理解しかねる雑誌の理解しかねる特集の話をされたが、最近ではそういうのも悪くないと考えてしまっていけない。
 ともあれ、そこに座って一緒に読んでいいかと問われ構わないと答えたのだから、読み進めるのが優先である。意識して淡々と読み進めるが、今一頭に内容が入ってこない。少女の体温と立ち上る香りが意識をくすぐってくる。先程抱いたばかりという意識は、防波堤とはなっていなかった。むしろ甘く屈服させた記憶が一層理性を蝕んでくる。
 そういえば、と彼女が見上げてきた。夏の服をそろそろ決めないとならないからまたタナッセに決めて貰いたい。
 心底幸せそうな幼い笑顔を見て、ぞくぞくと怖気に似た感覚が背を昇ってきた。
「あ、あぁ……。あー、そ、そうだな。そろそろ入学で忙しくなるから屋敷に行くのは、難しいだろうな。ここに届けるよう、その、手配してくれ……。…………」
 タナッセは唾を飲み込むと恋人の身体を横抱きにした。重たげなまつげが驚きから繊細に震えたが、そのまま抱き寄せ唇を重ねた。小さな手で彼の胸板をちょっと押してくるという抵抗らしき何かはあったものの、形ばかりであるというのは彼女自身が彼に告げてしまったから押しとどめる材料になり得ない。
 舌を絡め、服の隙間から手指を差し込むと、アンバランスに成長したふくらみを揉みしだく。彼を選んだ少女が彼の選んだ服を着て、彼の手指を受け容れている。彼の手指がうごめけば、彼の選んだ服からもその様がはっきり分かったし、彼を選んだ少女の口からは彼を呼ばう蜜声が溢れてくる。
 全く、と呆れるしかない。
 全く、何もかも癖になってしまったらしい。
 胸だけで達してしまった少女の顔は、突然のことなのに期待に満ちていた。とろけた眼差しでも一心にタナッセを見つめてくる。もっとしてくれるのかと彼の頬に手まで添えて。
 きっとこのままいっそ脱がさず着せたまま抱いたとしてもきっと喜ぶのだろうと思い、そんな思いつきをした自身を笑ったが、実行しない手はなかった。少女はとっくに受け容れていて、あとは自分がのめり込むかどうかでしかない。彼女と彼の関係はずっとそうなのだ。いつでも彼女が一歩先を行っていて、けれども彼女はずっと彼に引っ張って貰いたがっている。気付いていた。
 本能的な行為だろうがなんだろうが、たまにはそうしてみてもいいだろう。
 少女がスカートの中、脚を擦り合わせている感覚が伝わってくる。
 タナッセは恋人の名を呼び、微笑みながらパニエの奥に五指を伸ばした。
「これからも、私がお前の服を選んでやるからな」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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リハビリ的に一作書ききろうでパラレルエロるのは我ながら思うところ大アリですが、まあ気楽に書けるネタと言うことなんでしょう、きっと……。

タイトルがまんま過ぎる。
永遠の少女性。
あと、女性名に使われることになった経緯もあるので永遠の聖母性も(単語に聖母なんて意味はないがそこはそれ)。

タナッセ視点だと主人公は後光背負って花も背負って天使の羽も生えてます。もちろんしたくないわけじゃあないんだけどさ、という複雑な心境なのにエロいことしろすっごくしろとしつこく迫られて陥落したあとの話。

主人公はなんか壊れ物扱いされてるけどそんなワケないしそんなキレイキレイじゃないしこの人大丈夫かなー?程度に首傾げてますが、さすがにそこまではっきり口にすることはありません。
タナッセにともかく甘えまくっている自覚があるので。
ともあれ手を出して欲しい。出してくれた。理性薄い感じで求められるの、ちょっと関係性のリフレインみたいなところあって燃えるわーとか思っています(本編時空のエロネタで書きましたが)。

初エロ飛ばすのはどんな判断だとも思いましたが(書く気だった)、本編時空で書いたしと結局こうなりました。
本編時空でも服選ばせたり選んだりすると着衣エロスイッチ入る設定なんですが、そんなことさせてる隙間がなかった。
どうにかして選ばせたい。