いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2015年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年2月5日火曜日

【かもかて小ネタ】展翅蝶

【 注 意 】
・タナッセ愛情B後
・タナッセ視点三人称



展 翅 蝶



 腕の中には、夜目にも白い細身が収まっている。
 万一にでも風邪をひかないよう夜着を着直すよう口を酸っぱくして言っているのだが、大体余韻に浸っている間に妻は夢路を辿っており、つまりは今夜も彼女の裸身を隠すのは夫である彼、タナッセの役目だ。
 どこに触れても柔らかい身体を布地で包み終えると、また気持ちよく目を閉じる肢体を横たえ抱きしめる。すると、小さく鼻を鳴らしながら彼女の方も彼に身を寄せてきた。
 いや全く、と喜びを覚えながらもタナッセはあの日から何度目になるか知れない疑問を脳裏に浮かべる。こんな、下らない男のどこがそんなに良かったのか。
 城での噂通り、彼には何もない。リリアノとヴァイル、二人の印持ちが身内にいながら彼自身の特筆すべき能力はまるでない。公明正大なリリアノと人懐こく明るいヴァイルに不機嫌顔で皮肉をまき散らす彼がそろって並んだとして、一体どれほどの人間がタナッセを選ぶというのか。
 成人してしばらく経つというのにひどく幼い寝顔は、安らぎに満ちている。見詰めるたびにたとえようもなく胸が苦しくなり、最近は詩作にもかなりの影響が見られるようになった。いや、厳密にはあの日、――まだ彼であった彼女が、途方もない赦しと愛情をタナッセに訴えたその日からだ。中庭で詩の着想を得る散策をするたび、羽筆を持つたび、浮かぶのは一人のことだけ。
 故に一作、彼女のことしか語っていない詩歌を作り上げた。……結局現在に至るまで彼女の影が強い作品が時折生まれているが、仕方のない話だろう。互いに存分に愛し合った直後の今ですら、まだ彼女と深く繋がりたい欲求がくすぶっているぐらいだ。
 タナッセが妻へ向ける感情は、いっそ狂おしいと形容しても過言ではない。
 だからというか、件の一作の初稿は、少々過剰に美辞麗句の並んだものになった。彼自身頭を痛めたので、師であるヤニエ伯爵に送る前に自分で改稿を繰り返し、抑えに抑え、だが師には丁寧な赤入れを受けた。
 ただ、褒められた部分もある。従兄に詰められたせいで徹底的に不得手になり、比喩に用いることも少なかった種類の生き物を中心に据えたことだ。
 元々は、アネキウスにも繋がるとして鳥にしてあったのだが、当のこどもの頼りない危うさに食い違いを感じたため、書き直した。一週間寝込んでいたためだろう。あの頃の足取りは不安定で、タナッセのことだけを視界に収めてやってくると、僅かな引っかかりにも足を取られそうになっていたのだ。気を抜けば駆け寄って手を差し伸べてしまいそうなほどに。
 加えて、無体を強いた男へ瞳を輝かせてやってくる小柄は、どうにも儚さを覚えた。纏う衣装も女性となることを意識していたのか、以前に比べ華やかな装飾が増え、彼の頭の中にはある小さくも繊細な紋様を持つ翅がよぎったのだ。
 そしてタナッセの腕にあるあたたかみを見やれば、やはり正しい判断だったと思う。元から綺麗な面立ちではあったが、分化し女性を選んだ彼女は同性の貴族ですら思わず見とれる麗しさを手に入れていた。そのくせ、こどもの時分から変わらず、放っておけない何かがある。……絆されて、気付くと彼女の甘えを聞き入れてしまっているのは度し難いと感じることも多いが。
 だが、
「……タナッセ」
 寝言でさえも、甘くあまく。
 彼の名を呼ぶ声音を耳にすると、度し難くとも構いはしないかと考えてしまうのだった。










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おそらく低印友・低好友かマイナス印友・マイナス好友。
そして愛情はお互いMAX。