いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2014年12月30日火曜日

【かもかて小ネタ】Inner Core Harmonics/未

【 注 意 】
・タナッセ愛情過程、「印象~」設定で自分内補足
・心因性視線変遷



 感じる。
 ずっと感じている。
 これは奴の視線だと、私は知っている。
 損得尽く――ということに表面上なっている――の契約を取り交わした相手は、今日の舞踏会でも私の行動を監視しているのだ。勿論、終始視線を向けてくるなどという愚行は犯していないものの、あの言葉に詰まる独特の視線は不得手としており、どうにも息苦しい。
 タナッセ・ランテ=ヨアマキス。
 もしも今こうして会話を交わし合っている貴族達に問うたならば、全員が全員嫌いと肩を竦めるだろう人物。
 その評は概ね「あの凡愚な父親に似て平々凡々な存在」「そのくせ誰彼構わず噛み付いて回る皮肉と厭味の申し子」である。印持ちを産む可能性としてしか価値がないのに言いなりに出来る性格でないから、嫌がられていた。
 私の“嫌い”とはまるで内実が異なっている。
 歓迎しない風な態度で歓迎しているなどと口走った男。
 ――――うわ言を抜かす前に、まずは自分の顔を湖に映して見てくるがいいさ。そのまま沈んでもらっても、一向に構わないぞ。
 かねてよりの宣言通り、とうとう地下の湖に突き落とされたのは、今月の頭。
 申し出の際頭をよぎったように、実際はさほどヴァイルと仲が悪くなくて、一種の罠として配置された役どころなのかと思った。あるいは、仲は悪いが家族としての絆はまだ細く繋がっているかと。……だから私は今殺されるのだろうかと、考えたのだが。
 水の冷たさを思い出す。それは確かに身に迫って、たとえば今し方突き落とされたかのようにありありと思い出せる。上面の私は適当に相槌を打って笑っているが、冷徹な感覚は容赦なく。
 意識は見る間に掻き消えて、苦痛もなく全ては終わる筈だったのだ。あの日、あの時。それがあの視線に生かされてしまったのだから笑う以外に私は何も出来やしない。
 また、同じような目に遭う時が来るだろう。
 予感がしていた。
 だが、どうだろう。その時私はすぐに諦めるか。冷たさを思い出してしまうのか。
 タナッセ・ランテ=ヨアマキス。
 私の名前を呼ばず、私も名前を呼ばない人間。
 大嫌いだ。どうして奴は諦めず周囲に言葉を振りまいて、一人影で己を鍛えているのか。冷たさと鋭さばかりぶつけてくればまだ躱しやすいのに、何故奴の言葉には確かな熱が籠もっているのか。そもそも、どうして徴も従弟も嫌っている筈なのに、なんだって私へ対する文言ばかりが耳に付く。私はいつでも誰か越しの何かに過ぎないのに。
 けれども、理解不能なばかりでもない。余計に苛立ちを煽るばかりだが。
 ふと目線を上げると、件の青年の姿が真っ直ぐ前にあった。
 王を拒む、そもそも王になれない王子。
 ――――玉座などに何の憧れもあるものか。
 言葉が真実か、あるいは欺瞞混じりの真実か、を確かめる術は私にはない。私に分かるのは、おそらく続く一言、続けようとした一言が内心の吐露であったろう一点のみ。
 ――――印を求めるのはただ……。
 母親と、従弟。二人を見続けてきたからこそ王は厭だと奴は言った。嫌いな存在の苦痛なんて、果たして考慮に入るだろうか。
 しるし。
 私には、不要なもの。
 王になる気はさらさらなく、別段何に使えるものでもない。
 私は本来、あの寂れた村で年を取っていくだけの存在だったのだ。
 だから。
「…………」
 本当に欲しい人が、いるのなら。
 刹那、思考が途切れる。
 澄んだ、けれども破壊的な雑音が響いたのだ。
 続いて短く品の良い声音があら、おや、と眉根を寄せる。
 気付けば会話の輪に加わっていた一人の手に、カップがなかった。若い彼の顔は全てが朱に染まっており、反応もやや鈍っている。聞きつけた世話役達に引き渡し、多少汚れた床を拭かせている内、先までの考えを私は辿れなくなっていた。
 そして、奴の姿も見えない。
 もう、視線を感じない。
 私を引きずってきた男はいつの間にか姿を消していた。
 好奇ではなく、観察ともまた異なり、では嫌悪かというと最近は少し情感をたがえている視線は、あれば据わりが悪く、なければ疑問が湧いてくる。
 奴が何を思って私と婚約などという莫迦げた契約を取り付けたか。
 それが判明する頃には、不可思議な視線も自分の心も理解出来ていればいい。性別なんていう、今やどちらだってどうでも構いやしない選択をしなければならないのである。早ければ早い程、いい。
 私は詰まらない話題をさも愉快であるかのように振る舞う。最早知らぬ間に始末される田舎者ではなく、王候補と囁かれる事実を知りながらも、とうに不要な行為をする。
 詰まらないまま、笑い、肯き……そしてまた、笑った。
 面白くもないままに。










Inner Core Harmonics/未










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タイトル元ネタ:『Fate/EXTRA CCC』楽曲。
仲の悪い頃の二人もいいと思います。
愛情ルートに必須の婚約イベント後は
改めて「こいつ……」と互いに少し別の認識が差し挟まっていそうでまたいい。
イベント一つで以降の解釈大違いなの、いい。
けれども決定打は「与えられるべき報い」まではなく、
どちら視点にしても地の文がガッチガチに硬いだろうところとか大好きです。

自分が二次創作として書いたものは
萌えの発散物であるが故に如何とも直視しがたく。
なので概ね、書けたら最低限誤脱修正して即上げないし
それに近い形でアップしているのですが、
それでも萌えやキャラ解釈の塊なので「昔の自分は何に萌え何を考えてたのかな?」と
アルバムちっくに読み返すことがあるわけです。
(大体、中学時代に書いたり描いていたおはなしノートを
 大人になってから読み返したような気分を多少含んで読み終える)
今回は「印象~」だったのですが、キャラ解釈等を懐かしく思う反面、
我ながら何を考えていた過去自分……な謎部分もあったので、
今自分用に翻訳した感じの話です。
おおまかになら、目指した部分はよく分かるのですが……。
過去の自分と今の自分は経験量などの差からどう足掻いても他人だと改めて思います。
っていうか、多分今も萌えが先走ってて凄く読みにくいんでしょうね……。
読んで下さって有難う御座います。