いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2014年10月11日土曜日

【かもかて小ネタ】Sugar Sweet B* S*

【 注 意 】
・タナッセ愛情B後、あなたは私の  だから
・「フラグを立てたり折ったりするおしごと+α」末尾の髪の毛話抜き出し+軽く書き足し





Sugar Sweet BLUE Sky




 空色が指の間から落ちていく。
 しゃきしゃき、しゃらしゃら。
 私は輝く銀に少しだけ困りながら、思ったよりコシの強い毛質を持つタナッセの髪を整える作業に没頭する。
 お前がする作業ではない、と言われたけれど、無理矢理押し切った。短めに揃えられた彼の髪は定期的に侍従が切っている。余分がなくなっていく様にはいつも見とれて、でも、私以外の人がタナッセに触っていると不満もあって、だから。
 雲一つない晴れの色は、月光も射さない闇色が重苦しい私と全然違う。
 しゃきしゃき、しゃらしゃら。
 神の御座す空は届かぬ程遠く。
 でも、私の隣にはいつだって彼の空がある。甘やかな時間を過ごすことも出来る。甘い物、大好物だ。
「……えへへ」
 思わず笑いが漏れ――あんまりに子供じみた響きだと、頬に熱が上った。
「どうした、終わったのか?」
 タナッセがごく自然に問うてくれるのが、ちょっと救い。
 あと少し、と私が返すと、短く返事。次いで呆れ声がぼやく。
「しかし本当によく分からない奴だ。お前はなんでもしたがり過ぎる」
 そうだろうか、と思う。分かりやすいにも程があると、そう思う。タナッセ限定で、だけど。
 しゃきしゃき、しゃらしゃら。
 涼しげな音は、不意に止まる。
 はさみを動かす指は私のものだけれど、耳に届く音はそれぐらいのものだったから、唐突感が否めない。
 ともあれ、完成。
 タナッセに巻いていた白布を外し前に回ると、当然ながら先程よりも髪の短くなった彼が居る。自分で言うのもなんだけれど、なかなか良い出来だ。
 終わりました、旦那様。
 かしこまって言うと、
「莫迦か。莫迦を……莫迦だな、お前は。何が旦那様、だ」
 タナッセは不機嫌風な面持ちで立ち上がった。風、と表したのは頬が仄かに赤く染まっているため。私がもう一度旦那様、と言いながら腕を絡めても、それこそ莫迦の一つ覚えで莫迦ばか繰り返されるだけだった。
 私の大好きな青空は、今日も莫迦みたいに甘くて優しい。










Sugar Swet BABY Saint



 油も途切れ、灯は掻き消え。
 けれど月明かりが射し込んで、黒の絹糸は輝きをたっぷり含んでいた。
 頭を撫で、寝乱れた長い髪に五指をゆっくり通せば、なんの抵抗もなくするする解けていく。
 不吉な色彩、死を表す色味。
 そう言われていたと聞いたが、それでも伸ばしていたのは意地だったのだろうか。少なくとも当人は、気持ちよさそうに目を閉じて微笑む妻は、短いと頻繁に切らねばならず時間がもったいないと考えたからだ、と口にしていた。
 タナッセは無言で身を擦り寄せてくる彼女の背に片腕を回す。
 子供時分の小麦色から随分真白くなり常から熱の透ける肌に一層赤が強く乗って、けれども淡い笑みはそのままだ。その上、夜着越しでも先程までの行為の熱がまだ残っていると伝わってきて、彼の頬も釣られて紅潮してしまう。誤魔化すように何度もなんども繰り返し髪を梳いた。
 表面を撫で、五指を差し入れ、一束摘んで。
 さらさらすり抜けていく心地は実際良いものだ。
 日に焼けた肌身が白を得ていったように、傍目にもぱさついていた髪はしっとりとした艶を帯びていった。
 初めてこの感触に意識して触れたのは、彼女がまだ彼だった頃。雨に濡れた髪は雲の垂れ込めていようともきらきらと眩く、おかしな程動揺した。
 少なくとも今のタナッセにとっては、縁起の悪い色などではない。どんな色より神の光を湛え、死を一人静かに悼む色。
 それはつまり、月が耀い星の瞬く夜空そのものだった。
 タナッセの体にも微かに熱が燻っている。じっと上目で見上げてくる腕の中の唇に、なんの照れもなく自身のそれを重ねた。ややあって離れ、今朝自分は髪を切ったが、と彼女の髪をいまだ味わいながら告げる。
「……お前は長い方がいい、このままにしておけ」
 ん、と素直に彼女は肯いたがすぐにこうも続けた。
 タナッセは短いけれど実は長い髪が好きなのか。それとも、私の長い髪を好いてくれているのか。
 無論後者だ。一度長くしようかと試していた時期、ユリリエにいいだけしてやられてから、どうも長髪は苦手だ。男は女程髪飾りも髪型も種別がない――奇抜さを好む輩はともかくタナッセは主に伝統的で品の良いものを好んでいた――し、困ったこともない。好んでいるのは彼女の髪だから以外なかった。しかし歯が浮きそうで言えたものではない。
「ど、どっちでもいいだろう。それにお前は着飾ることが好きなのだから長い方が都合もいいだろうに。あぁそうだ、明日結い上げさせてみたらどうだ。そうすると時間も掛かる、もう眠れ、眠ってしまえ」
 空回り気味の自覚はあったが、言いながらいつものように彼女の背をぽんぽん軽く叩くと、物言いたげな目を向けて来つつも瞼はゆっくり閉じられた。かなり眠気が迫ってきていたのだろう、間もなく身体の力が抜ける。
 起きている間はあれこれタナッセを揺さぶってくる彼女は今、ちんまりと彼の腕の中に収まっていた。ちんまり。いかにも彼女に似合いの擬態語に口から吐息の笑いが零れた。このちんまりした存在が彼を赦し、彼の心を捉えているのだ。
 愛おしさが改めてこみ上げてくる。
 小さな頭を撫で、長い髪の毛先までを梳いて。
 月明かりはタナッセの手指の動きに合わせ彼女の夜空の上で踊り、穏やかな眠気に包まれるまで彼はいつまでもいつまでもそうし続けていた。










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大変ご無沙汰しております。
間が空きすぎて、控えめに言って胃が痛いです。
その間も拍手戴いていたようで、すみません&ありがとうございます。
取り敢えず書きかけのネタだけがたんまり出来ました。
大雑把に300kbくらいのテキストが半端状態です。

ここから普段通り。

耀いはかがよい、かがよいです。
好きな人の髪をいじる、いじられる、っていいですよね。

というか既に散々書いておいてなんですが、
グラドネーラにおける色彩感覚が知りたい。
概ね現代風でいい気もしますが中世風の可能性もある。

それにしても、最初の方のはいつ書いた話だよとセルフツッコミと共に
短い話なのでコピー中に大体の内容を読み返せてしまって恥ずかしい二重苦です。