【 注 意 】
・ヴァイル憎悪B後(反転版)、三人称
・男ヴァイル三十代、女主人公死んでます、二人の子供出ます(主人公にうり二つ)
つまり全体的にアレなので一応「えろくはないが成人向け」
タイトル通り近親もの
引き出しにしまっておける程度の大きさ。
その肖像画には心細そうな面持ちの女が描かれている。
何をする必要もないために長いながい、膝裏まで届くだろう黒髪は艶めき、伏し気味の黒目は潤むように煌めいていた。見る者に与える印象は纏う衣装の華やかも相まって貴人のそれ。だが、ほとんど隠れていない胸は娼婦という職も思わせる。
しかし、その額には僅かに輝くものが覗いていた。
淡い輝きを持ち、複雑な模様を描く徴。
神に寵愛される人間だという証。
長い前髪で本来隠されている筈のそれが見えているのは、後ろから抱きすくめる男に女が頭を寄せているためだろう。
無言で眺めていた彼は、嘆息と共に寝台の側机に仕舞い施錠する。
そうして今日も、あの部屋へ向かう。
黒髪の愛しい存在に会うために。
*
扉を開けてすぐだ。
父さん。
まだ幼い声がヴァイルの元にやってきた。
背中の中程まではあるだろう黒髪に、晴れた日の湖面を連想させる黒の瞳。背は低めで、袖から覗く手首は細い。伏し気味の眼差しこそ大人びていたが面立ちは幼く、十三、四に見える。子供はあとひと月もすれば性別を選択する年になるのだ。
用意は出来ている、と子供は露台を指さした。
指の先には有り体に言って沐浴の道具が揃っている。実子といえど、子供を入浴させるのは従者の役目であり本来王の仕事ではなかったが、ヴァイルは小さな身体を抱き上げると服を脱がせ始めた。
部屋の隅に控えた侍従達は何も言わずそれを受け入れる。彼ら親子には当たり前の行為だからだ。ただ、準備と後片付けのみを粛々とこなす。
今日も、王自ら子供の髪を身体を洗い拭い、夜着を纏わせた。
そうしてやはり、抱き上げて寝台に連れて行き、共に横になる。
常の光景。日常ということ。
だから子供は何も疑問しない。
この一室に閉じ込められていることすら、ほとんど悲しまない。
「俺はさ、母さんの代わりをして欲しいんだ」
母さんの? 父さんの仕事を手伝えばいいのだろうか。
ヴァイルの選んだ夜着を纏う子供は、首を傾げる。
「手伝って欲しいのは王様としての俺じゃないよ。でも、お前にしか出来ないんだ」
ふっくらした頬にてのひらを這わせれば、子供は瞳を閉じ上向く。その唇に自身のそれを重ね、口腔をまさぐっても抵抗は返らない。全て、いつものことだからだ。ややあって口を離した彼は、
「今すぐじゃないけどね。来月、女選んで欲しい」
なんだ、と微笑みながら子供は濡れた唇で考えもせずこう返した。
言われなくても最初から――昔からその気だった。性に合っていると思うから。
「そう。……そうだよね、うん、昔からお前は可愛いものが似合ってたし、喜んだもんな」
物心つくより以前からそうしたものばかりを見せ、与え続けたのは他ならぬヴァイルであるが、彼はただ肯いた。
でも、母さんの代わりが政務の手伝いでないのなら、私は何をしたらいいのだろう? この部屋から出られない母さんや私にはそんな大層なことは出来ない筈だけれど。
「簡単かんたん。でも、説明したら驚くと思うから、その時まで内緒な。母さんもお前が継いでくれたらきっと安心すると思うよ。最期まで俺に謝ってたから」
素直に肯く子供は、けれども一つの不安を口にした。
その不安を笑い飛ばし、背を撫でさすり眠るよう促し――既に寝入っている子供の寝顔を見ながらヴァイルはほくそ笑んだ。
父さんは格好いいから、隣に居るのが恥ずかしくないような見目になればいい? ……彼女に生き写しの彼が、言うような容姿になる訳がない。生活環境のためだろう、当時の彼女より肌の色は白が強く、幾らか肉の柔らかさも多いし、より女性的な指向ではある。声も年相応の甲高さがある。
逆に言えば。
他全てはまるで彼女の子供時分である、と。
そういうことだ。
子供があの肖像画の女と相似になるのは、最早遠い未来ではない。
我知らずヴァイルの笑みは濃くなった。
*
腰に届くつややかな黒髪。
伏し気味の眼差しはけぶるような睫毛に彩られている。
左右の頭部には花の髪飾り。
赤を基調として、花と蔦を連想させる意匠が美しいドレス。
胸の柔らかの大半が布地で覆われていることを除けば、そこに立つのは概ねかつての面影だ。
「――――父さん!」
高すぎず低すぎない大人の声で微笑む女にヴァイルは笑って言った。
これからは。
「これからは、ヴァイル、って呼び捨て。いいでしょ? 母さんの代わり、ってことでさ」
薬でもたらされる強烈な快楽で絡め取り、その常習性でも逃さない。
性の苦しみは鍛えようにも時間が掛かって非効率的で、死に瀕する痛み程は慣れさせようもないが故に効果が見込めることも多く、かなり強力な代物だという。何が大した効能はないだ、と以前は御典医である裏護衛に苛ついたものだが、今はむしろ都合がよいとすら思う。いくら幼少の時分からヴァイルにとって不都合なあらゆる情報を完全に遮断させようとも、これからの行為は本能で嫌悪が湧くだろうから。
だからいつものように頬を撫でる。唇を僅かに開かせる。けれども紅色の口内に満ちるのは同じ色した彼の舌ではなく、唾液と混じり合う透明な粘度ある液体。
飲み干させて、まろいふくらみを潰す程抱き寄せて、舌を絡め始めて。
そうすればもう、おしまいだ。
吐息は熱を孕み、いまだ幼さの残る身体は落ち着かなそうに揺らめきだす。
父さ、ヴァイル、ヴァイル……父さん、ヴァイル。
唇を離せば濡れた薄紅が縋る声を出した。
切羽詰まった様子の彼女の背を片手でさすりながら、ヴァイルは微笑み浮かべ空いている手で籠りを終えたばかりにしては育っているふくらみを優しくやさしく揉みしだく。
「大丈夫。……俺がこれからお前の……あんたの辛いの、なくしてあげる」
耳元で囁くと、腕の中で彼女に瓜二つの――けれどそれよりずっと無垢に育て上げた細身はびくりと大きく震えた。
その様はヴァイルに充足感を与える。これから退位までの数年、時間を掛け、彼女に覚えさせた全てを覚え直させようと思う。
十五年前、愛憎注いだ彼女が死んだ。
けれども、彼は瓜二つで――とうとう彼女に成ったのだ。
ヴァイルの十五年の我慢は、ようやく今日終わろうとしていた。
箱庭インセスト
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ヴァイル反転憎悪(ヴァイルピンENDロール)で子供が出来た場合、
ヴァイル→子供は、
自分似:適度な距離を置く(が、無論可愛がる)
主人公似:作中ラインでないにせよちょっと歪んだ対応待ったなし(特に主人公が夭逝している場合)
だといいなあとか考えています。
両方を適度に併せ持ってる場合が一番苦しい気がする。ヴァイルが。
まぁテエロ的な意味で大体一人目は哀しいことになります。まず生まれない。
そう言えばヴァイルはサニャ相手だと“お前”呼びで、
「あぁすっごい貴族っぽい! 普段あんなに人懐っこい系なのに超上に立つ人っぽい!」
とむやみに萌えた覚えがあります。
でも監禁主人公に対しては変わらず“あんた”呼びであって欲しい。