いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2015年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年12月24日火曜日

【かもかて小ネタ】あの子の成長

【 注 意 】
・タナッセ愛情B後
・タナッセ視点三人称、子供ネタ注意(そこそこ喋る)




あの子の成長



 すいすい。
 あるいは、ひょいひょい。
 子供時分に来ていたのとよく似た衣装の女は軽やかに光射す上方を目指していく。目指す足場を支えるのは、地面にうねり潜る根が印象的な一本の樹木だ。彼女は大地色のそれに手足を預けながら、緑密集する場所へ行き、
「……えいっ!」
 片手を細い枝に伸ばす。手指はたなびく薄布を捕らえ握り込む。瞬間、回廊や窓辺りから四方八方へ吹きすさぶ風がやってきたが大きな瞳を細めて堪えると、やおら地上で待つ彼に、タナッセに手を振ってきた。モルを呼ぶ必要なんてないと言っただろう、と。
「こここら! 手を離すんじゃない!!」
 妻が木登りを得意としていることは頭では分かっていた。実際何度も天辺から木漏れ日を纏いながら降りてきたり、彼の腕に降ってきたりしたのだから。しかしこんな強風の、それもいつ吹くかも知れないのに手を離すなど、正気の沙汰とも思えない。タナッセは慌てに慌てた。
 あ、と一瞬凍った辺り、考えなしだったらしい。薄布を首に巻き付けると神妙な面持ちで彼の元まで降りてきて、ごめんなさい、と眉尻の下がった上目を向けてくる。
「いや何故私に謝る」
 心配を掛けたから、と言下に返された。
「心配は心配だったが、それもお前が落ちたらと……つまりお前が怪我をするのが問題なのであってな。その、分かるか?」
 自分を大事にしろ、という話なのだ。そこでタナッセの心配に比重を置く反省よりも、そちらに重きを置いた反省をして欲しい。
 彼の薄布を柔く巻いた彼女は、薄紅の唇を幾度か物言いたげに動かしたあと、肯いた。
 がんばる、と。
 ……どうにも信用ならない頼りなさだった。

          *

 すいすい。
 あるいは、ひょいひょい。
  タナッセは見慣れてしまった木登り姿は、けれど子供が生まれて以降なりを潜めることとなる。彼女はなるべく子供と過ごすことを望んだし、足を引っ張りかね ない行為は意識して控えているらしかった。未分化じみた衣装も、確か産みの繋がりが出来た頃には着ないようになっていた。
 だが、今目の前で妻であり母である彼女は浅く眉を立てて我が子に笑いかけている。
 お母様が登るから。
 言うなり彼女はリボンを外しドレスの裾を簡単にまとめ、幹に手足を引っかけた。
 あぁ、とタナッセは肩を落とす。一方慌てだしたのは子供だ。遠いのに高いのにと父へ助けを求める目を向けてくる我が子に、お母様はあぁいう行為が得意なのだ、だから安心しているといい、と宥め付ける。……ドレス姿なのは頭が痛かったが。
 事実、彼女は女性物によくあるたっぷりした脚部の膨らみなどに多少の苦戦を強いられつつも、
「……わあ」
 ぽかん、と子供が口を開けて見上げてしまうぐらいの早さで、木漏れ日の源へ進んでいく。はしたないぞ、と注意しつつも気持ちはよく分かった。タナッセも、あのいっそ清々しい程のこなれた様は心配を拭いきれないながら見事だと感じるのだから。
  程なくして彼女は紙片に辿り着く。元々は子供の手元にあったそれを掴むと待つ夫と子供に目を向け、片手を上げようとし――我に返った様子で首を振ると、今 から戻るから、と笑いかけてきた。タナッセの服の裾を掴んでいた子供はしきりに気をつけてと口にしたが、帰りもなんてことない軽やかさで地面に降りたつ。
 ちゃんと見ないようにしたから、だから、あなたの見せたい物がなんなのか教えて、と彼女は子供と視線を合わせながら紙を差し出す。
 見せたい物があるの。
 と、普段大人しい子供が珍しくその日の昼、父母の手を引っ張って家族だけの中庭に来たのがそもそもである。声を掛けられたのは、正確には朝だった。だがどうしても外せない用件があり、昼まで待っていて欲しいと約束して、今に至る。
 大事そうに浅く抱きしめた丸い筒状の紙にあるものが何か、いくつか候補はあった。けれど、くすくすと一体なんだろうと問う母の声に、内緒ーと返事するはにかんだ面持ちを見れば、つまらない予想を口にする野暮が知れる。まして、先に目を通してしまうなど。
 子供は突然風が吹きすさぼうとも決して飛ばないようしっかり受け取る。
 良かったな、と頭を撫でながらタナッセは妻の顔を見やった。
「危なっかしいのは相変わらずだが、今度はちゃんと思考が先んじたらしいな」
 がんばってますから、と彼女は胸を張ったが、今ここで、我が子の前で出来るのは、
「普通はそうするんだ、莫迦か」
 素っ気なく返すくらいだった。















/ 家族の肖像



 お父様もお母様もそこに座って、と指示の通りに二人は用意されていた椅子に腰を下ろした。
 けれどもじもじし出して一向に紙片の中身を示そうとしない。
 この引っ込み思案はどちらに似たのやら、と苦笑する。
「……えいっ!」
 顔を淡く染めながら子供は二人に紙の表面を向けてきた。
 ただし、
「こら、逆さになっているぞ」
 勢い込んだ分、疎かになった。どもりながらそんな、と子供が天地を正しくすると、彼の見せたかった物が明らかになる。
 それは、三人の人物が描かれた緑と花の空間。
 誰であるか、どこであるか、一目で分かる水彩の絵。
 凄い、と感嘆の吐息が妻の唇から零れ――ちら、とタナッセを見上げてきた。どうせドレス姿で、と思ったろうけれど、がんばった甲斐はあっただろう?と。
「だから。……お前は昔から危なっかしいのが問題なんだ」
 能力自体は評価しているというのに、と嘆息して彼は我が子の描き出した家族の肖像に目を細める。緑の面積が多いのにあたたかに感じるのは、描いた子供の心があたたかだからだろう。
「素晴らしいな」
 彼女同様、讃える言葉は自然に口をつく。
 子供は紙を破りかねないほど両手に力を入れた。手指が真白い。
「お、お、お父様もお母様も大好きです。忙しいのにいつも遊んでくれてありがとうございます。お仕事頑張って下さい。これからもみんなで幸せがいいです」
 おそらく事前に文面を定めてあったのだろう、どことなく棒読みで、抑揚も不自然だ。けれども些細な話である。
 胸元で手指を絡ませあっていた彼女は急に立ち上がると、もう大好き、お母様も同じ気持ちだ、と子供をぎゅうぎゅう抱きしめ始める。
 出遅れた、とタナッセは思う。無論、彼女ほど直截な表現が叶うものではないが。
 軽く咳払いをし、とにかく彼は子供の間近で片膝を付き視線を合わせ、どうこの気持ちを伝えたものか思案し始めた。










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割と親莫迦になると思うんです、二人。
時に本姓はどっちにするんでしょうね? ヨアマキスなのか、主人公の本姓か。
(余談ですがブログに上げたヤツかボツったテキストかちょっと思い出せませんが、
 当方の愛情B設定だと主人公の本姓にしてあったはずです)

そういえば全く関係なくてアレですがいつも通りなので気にせずフリーダム入りますと、
まだ「神の業~」遠く、婚約直後のタナッセに
「ほーらコレが君の未来嫁(プラス君自身)だぞう」
とかイチャラブ映像見せたらどうなるんでしょうね。