【 注 意 】
・ヴァイル憎悪C後、成人向け
・ヴァイル×主人公前提かつ帰結しますが、再びのエロゲ脳暴走
=モブ出番たくさん(ジャンルを考えると)
=ご注意下さい
まあ一言で言うと要注意物件
虚無回廊
ランテ領からの王の帰還には、荷が一つ増えた。
表向きの理由は使用人が立て続けに不可解な死を遂げたため、であったが、不可解などと誰一人信じる者はおらず、その“荷”が言うとおりの物に見える者もいない。
王に支えられるようにして歩くのは、長く豊かな黒髪で彩られた女の身体。
どこも誰も映さない瞳と僅かに開いた唇を連れて、六代国王は満足げですらあった。
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感覚がない。
今、自分がどういう体勢をしているのか。
今、自分が誰に突き上げられているのか。
そもそも今は、いつでどこ、なんだろう?
ただ、声がたくさんある。
聞こえてる。
意味を成していない音の羅列一人分と、私に何か言ってくる低い声が複数人分。
誰かの目も、感じている。
嫌いが込められた嫌な視線なのに、どうしてか見つめられると嬉しさもこみ上げてくる。
鼻の奥にこびりつく香のせいか、それ以上考えられない。これを嗅ぐと、頭が痺れるし肌も疼いて――あれ、違うかもしれない、どっちももっと前からだった、ような。
「っ!」
考え事に逸れ始める思考は、口に押し込まれた感触で途切れた。大きくて、硬くて、なのに柔らかも確かに感じて、苦いもの。無理矢理ぐいぐい押し込んで、気持ち悪さに私が仰け反ると出っ張りみたいなものが辛うじて口内にある程度まで引き抜いて、けどすぐ奥まで入れてくる。首を振ってもやめるどころか出し入れは激しくなるばかり。
歯を立てたら、怖い声で怒られてしまった。ごめんなさい、と謝った気がする。
ごめんなさい。
口が既視感。何度もなんども繰り返した覚え。とても前に、最近もまた、いっぱい口にした覚え、ある。ううん、憶えている。ヴァイルに言った、意味ない言葉。
そうだ、最近。
憎まれて、嫌われて。
ランテの屋敷で自由がないからもう会えないと思って。
でも、来た。昨日……一昨日? もっと前? 分からない。時間感覚がない。いつか考えるだけの力がない。
体が全部、きもちいいから。
ヴァイルを思うと少しだけ思い巡らせること出来るのに、他は全然。
胸、片方は力任せに揉まれてる。もう片方は誰かが先っぽ吸ったり噛んでる。口はさっきから男のあれ、を、頬張らせようとするのがいる。体の中心はしつこく揺さぶられて、そのたび頭のてっぺんから足の爪先に、思考止まるぐらいのきもちいい、が走る。
いつからしてるのか。
そもそも現実なのか。
……この人たち、誰?
疑問、口から漏れてたんだろう。低い声がいくつか……四つ? 衛士、園丁、侍従、あと医士。みんな見事にバラバラで、変な感じ。
なら、あの目だれの目?
尋ねようとした瞬間、中で何か弾ける感覚が起きた。弾けるよう。叩き付けるよう。どろどろしたものが、お腹を熱くする。何が起きたか頭では分かってるのに、それでもやっぱり、凄くて、凄く良くて。
もっと、もっと、と上手く喋れない口が勝手にねだった。
同時に全身を走り抜けた耐えきれない程の嫌悪に任せ腕や足をがむしゃらに動かせば、軽い笑い声でいなされ押さえつけられる。
そうしてまた、別の硬さが中をこねるように刺激を始めた。
胸を揉んでいた手が、今度は先を引っ張ってきて、あぁ、人が変わったんだ。
これ、何人目なんだろう。
それとも何回目、なんだろう。
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最も華美な鹿車には、明るい髪色の青年と、彼に抱かれた物扱いの娘がある。
「俺さ」
国王たる青年は、彼女の腹を優しく撫でさすりながら話しかけた。
「俺ね、根拠何もないけど確信してるんだ。あんたが俺の子孕んでるって」
返事はない。あるはずも、ない。
「うん、やっぱあんたはこれがいいな。小難しいこと考えて離れてく半端に賢い自分勝手より、こっちでいい。分かってたら最初っからこうしてたよ。時間無駄にしちゃった」
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気、失っても起こされる。
ご飯、水、口にしたっけ?
分かんない。なんも分かんない。
身体べとべとで、服に染み込んだ液が肌に張り付いてきて、鼻につくのは香じゃなくなって生臭さだけで。
明るい気もする。
暗い気もした。
ただ、あの目だけは今でもはっきり分かる。見てる。見てくれてる。怖くて好きな、あの目。今は誰のか、なんとなく分かる。
「いや凄かったな、あんたもあいつらも。あっちのが大概か。あんたは人工だけど、あいつら天然だしさー」
その目、が近くの気がした。
「……さすがにちょっと、やりすぎ。好きにしろって確かに俺言ったけど、あーもう、かかってないとこないじゃんか」
嫌そうな感じ。
哀しくなって、ごめんなさいって言う。
ごめんなさい、そう、そんなつもりじゃなかった、ヴァイルが思ってるのと違う。
ヴァイルを傷つけたくなんかなかった。
だから、だから、だから。
「あぁ。……あぁ、うん。それはいいや、いいな、もう。良くないけど、どうせもう良くなるよ。あと一回ぐらいこなしたら、きっと良くなるかな、これなら」
まずは綺麗にしちゃって、と後ろの方に声が向いた。
布の感触。
ぐちゃぐちゃの服がなくなって、嫌な物が拭われる。
ヴァイルは、どこ?
「部屋の隅にいらっしゃいますよ」
低い声。聞き覚えがある、出来ちゃった声。
厭。嫌。
なのにまた、たくさんの手が伸びてくれば、きもちいいが体全部に蔓延する。
どうしてこんなことするんだろう。
私のこと、城から追い出すぐらい嫌いになったはずなのに。
何年も、こっちの地域に来なかったのに。
……それ、なんの話だったっけ?
むね、はさまされて。て、にぎらされて。なか、おくまではいってきて。
もう分かんない。
全部、分からない。
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唇を交わし合う。
覗き込むように顔を近づける青年に、ヴァイルに、応える形で虚ろな彼女は顔を傾けている。
円やかなふくらみには彼の五指が食い込んで、衣装を押し上げる尖りと共にコルセットも何も付けていないと主張していた。
ドレスのスカート部分が絶え間なく動く。隙間なく重ねられた唇から透明なものが零れるたび、彼の手指が力のこめ方を変えるたび、体の中心を知らせるように布地が寄っていく。
ん、と彼女の喉が何度も鳴る。ヴァイルは唇を交わす間に笑った。
「そんな顔しなくてだいじょぶだって。今、あげるからさ」
たっぷりのドレープと、スカート部分を膨らませるペチコートをたくしあげ、内股にてのひらを這わせれば、粘質の水がまとわりついてくる。熱に蕩ける源泉へ指をあてがえば、容易く三本呑み込んだ。蜜のような潤滑液にまみれた粘膜の襞は歓喜に蠢き、これが包んでくるのかと想像したヴァイルは熱い吐息を零すしかない。
「俺、そういう欲求ない人間なんだって思ってたんだけどな。したいって悩むこと、言われてるようにはなかったから。……違う。違ったね」
返される言葉は無論響かない。
五年振りの再開。
あの日、笑顔と悲哀とを複雑に混ぜた表情と声を向けてきた彼女に、いっそ凶暴なまでの感情が忌避の感情を上書きした。いまだ希望を抱く姿が苛立たしかった。どうにかしてやると、決めた。
そして。
彼が男を選ぶと知った上で女を選んだ彼女にする仕打ちは、最初から一つしかなく。
「予想より早くてびっくりした。滞在期間ぎりぎりの気でいたら、五日もたないんだもんな。遅かれ早かれってやつ?」
彼女の肩までを晒し、右の首筋から右の肩間接まで舌で味わう。あ、と間延びした媚び声が激しい嬌声と共に空間を満たし、ヴァイルは心底愉快そうに声を上げて笑った。
最早おぞましいと感じ遠ざけた判断は大間違いだった。端からこうしておけば良かったのだ。余計なことを喋らない、どこにも行こうとなんてしやしない、彼を一人になんてしない存在。
どうせ己は一人なのだと吹っ切ったはずが、五年はなかなかどうして長かった。血迷う程に。血迷ったと少し前まで理性が判断した思いが頭から離れなかったぐらいに。
果たしてランテにやってきたのは迷走ではなく、むしろ遅れて見つけた正しき道。
彼女を、彼だった彼女を打ち負かした記憶より遙かに晴れやかな気持ちを得て、ヴァイルは全てを流すだけの、しかし悦びだけは素直に享受する蜜壺の中に自身を埋めていった。
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タイトル元ネタ:「さよ教」サウンド。
急に涼しくなったおかげで、こう、落ちるように眠れますな。
というか睡眠ばかりが捗ります。困った。