いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年1月29日火曜日

【かもかて小ネタ】初恋はちみつ

【 注 意 】
・「も☆ぐら」でタナッセに飛びつき楽しく過ごしたルートの後日
(成功→むしろ抱きつく→かかったな)



初恋はちみつ



「……う」
「むっ!」
 前者はタナッセのうめきで後者は私が眉を浅く立てたために漏れた声だ。回廊で私と彼は鉢合わせしたのだが、いつものようにあちらは逃げ腰。二度目の告白をすればこけつまろびつ部屋から出ていき、地下湖では唇を合わせてきて、そのくせいまだに逃げ回ろうとするのだから全く困る。
 私が小走りに寄っていくと、大柄な護衛が前に出てきた。しかしそれは何度も経験している。いつも通りモルに抱きつく。当然のようにタナッセは戻ってくるので飛びつこう。
 そんな算段はあっけなく弾け飛んだ。あちらも毎度のことで対処になれてきたらしく、一向に裏をかけないまま時間だけが過ぎていってしまった。……多分、タナッセは逃亡成功。肩を落としてモルから距離を取ると――回廊の曲がり角辺りに、揺れる薄青の布地が目に入った。疑問で瞬きを繰り返す私の様子に無表情の衛士も首を回して後ろを見やった。あ、好機。
 隙を突いて駆けだした私に慌てる気配があるけれど、せっかく彼が逃げず留まってくれているのに捕まるなんて出来るはずもない。ないのだが、、モルの脚に勝てるかどうか。どうしよう?
 考えていたら足元への意識が甘くなったらしい。普段なら気にもかけない微かな引っかかりに爪先が捕らわれ、現実は非情なので考え事をしていた私が体勢を立て直すのも無理で、つまりは転んだ。
 かろうじて血が出るような傷は避けたものの、全身に広がった衝撃が大きかった。生まれたての兎鹿に似た動きでうつ伏せから土下座に姿勢を持って行き、しかしそこで一休み。……痛くはない、ということにしたい。痛いけど。
 石の床の冷たさと土埃のにおいを堪能するのは、けれどすぐに終わった。
「莫迦か! 調子も戻りきらないのにモルに対抗しようとするな、お前は! その上で走るとは本当に莫迦だろう貴様!!」
 ほのかに苛立ちを誘う叱責が、実際のところ心配10割の大声が、間近から聞こえたからだ。声の主、タナッセはうずくまっていたこちらの上半身を起こした。そして私の顔や手、膝などいかにも擦りそうな部分に視線をよこす。顔も膝も問題はなかったようだ。彼はてのひらを取ると、こで柳眉を歪めた。
「ああやはり手は駄目だな、血は出ていないようだが……念のためだ、医務室に行く」
 行くぞ、でも行くか、でもなかった。思わず感嘆の声を上げそうになったがハタと我に帰る。
 タナッセは今私のてのひらに触れて傷の様子を確認したわけだが。
 それは。
 つまり。
「…………ん」
 息を詰め、思わず私は空いている方の手で自身の唇に触れてしまった。いやまあその。さすがに唇に、と考えたものじゃない。顔に擦過があれば、触ってもらえ――えぇと、触ったのかなと、脳裏をよぎったのだ。我ながらちょっととち狂った思考だとは思う。恥ずかしい。恥ずかしすぎて手元に本があったら投げつけたいほどだ。
 と、針を刺した時のような痛みが手からあることに気付く。いつのまにか伏せ気味だったらしい瞳を上向けると、タナッセが顔に熱を集めていた。次いで、彼の手の内にあった私のてのひらが軽く握り混まれているのが目に入……ってそりゃ痛いだろう。とはいえ指摘するほど酷く痛むのでもなし、顔を赤くした彼に何を言えばいいのかもよく分からないし、困って首を傾げた。
 互いに次の一手が出せず、人の気配を感じたモルがそれを知らせてくれるまで、固まっているしかないのだった。










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Q.初恋っておいしいの?(王城住まいの神業前主人公さんのお手紙)
A.押しても引いても甘いもの。(王城住まいの告白後主人公さんのご回答)
この主人公はきっと本は顔面にぶち当て、
地下湖には引きずり込み、
告白は二度している。

主人公が究極のツンデレで究極のヤンデレだと信じて疑わない。
友人タナッセのどてっ腹をえぐる際は大体印愛反転させてるせいでしょうが。