いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2015年1月9日金曜日

【かもかて小ネタ】ロマンチックモード

【 注 意 】
・タナッセ愛情B後
・リフレインリリック主人公、えろくないが一応成人向け




ロマンチックモード



 肌身から発される仄かな熱。
 首筋に吐息が掛かり、互いの肌同士はとうとう体温を共有し出す。
 私の好きなこと。行為。タナッセとのひそやかなひめやかな触れ合いは、私にとってある種神聖な儀式でもあった。
 互いに衣服を脱ぐのももどかしく交わり合うのもいいけれど、彼に一枚いちまい着ている物を脱がされていくというのも、なんだか不思議な程二人らしくて浸ってしまうのだ。不思議な程、なんて言っても理由は勿論分かっている。
 私はだって、タナッセとぶつかり合うことで少しずつみっともない張りぼての鎧を脱ぎ捨てていった。
 リボンは尻尾を片方掴んだ彼の指で一枚の細長い布きれに変わり、ボタンもピンも外されて、針で縫い止めた危険な装飾品も丁寧に。コルセット嫌いの私にしては珍しくまともに着ていたから、それには少し手間取ったようだけど。
 脱いでいく――脱がされていく。剥がされていく。余分がなくなる。彼のためだけに。彼のおかげで。
 心が繋がった相手の体を欲しくなるのが大人だと聞いた。
 心がなくても誰かの体に欲を覚えるのが大人とも聞いた。
 私は、その意味では大人じゃないのかもしれない。最初は当たり前に前者だと思っていたものの、違うと感じ始めているから。自分で初めから口にしていたのに最近ようやく思い至ったなんて恥ずかしいけれど、タナッセの指や唇、濡れた舌が丹念に私のかたちをなぞり始めれば、やっぱり新しい自覚が行為への耽溺を深めているように思えた。
 高めているのか焦らしているのか曖昧な刺激に声が堪えきれない。何度も身体が跳ねた。早く終わらせてと願う程焦れる自分と、苛みにも似た幸福が続けばいいと願う自分は、きっとどっちも嘘じゃなくて……それなら私は、そうなのだろう。
 思った瞬間、幾度受け入れても消えない圧迫感がおなかいっぱいに充ち満ちる。埋まっているかたちは中を抉るようにして私に悦びを与えては去ろうとして、なのに甘ったれた声音でねだればまた私を満たしに戻ってきてくれた。
 酷い苦痛の果ての夜明け。
 酷い快楽の果ての夜更け。
 まるで違う二つは、こんなにも相違している癖にどこか相似して。
 つまりはそうなのだと、決して不快ではない空白に意識が呑まれかけながらも、胸の内で告白した。
 私は、誰より深く心が繋がりあった相手と、こうして毎晩その記憶を追体験する。
 ただでさえ素晴らしい情を交わす営みに加え、毎日まいにち幸せな想い出を繰り返し呼び覚ませるなんて、頭が甘さで痺れてしまいそうだ。ううん、とっくに甘さで溶けてしまっているに違いない。証拠に私はだいすきなひとの名前しか音になっていなかった。
 掛布を掴んでいた五指を必死で開くと私は腕を上げて彼の首に回す。汗。熱さ。同じように昂揚した肉体なのに、彼の身体の方が熱くてあつくて。私、冷たい人間に思われてないかと心配で。
 タナッセ。
 一際情けない声で叫ぶと、彼は、タナッセは私の一番奥に火傷しそうに蕩け滴るものをくれた。
 私が欲しがる。
 彼は、受け止め応えてくれる。
 タナッセの腕が同時に達した私の背に腕を回した。かき抱く。抱きすくめる。誰かを支え受け止める力強さは私がこわがって手に入れられなかった代物。愛しいいとしいと、心の内で莫迦の一つ覚えに繰り返す。繰り返す。そうして夜が更けていく。
 だから、今日の回想はここまで。
 違う。
 また明日、明日も私はタナッセと恋に落ち、愛を交わし合う。
 明後日も、しあさっても、その先も。
 彼の長い指が私の顎を捕らえ唇を奪うように重ね合わせてくる。
 舌を絡めれば甘い酒精が漂ってきて、味わうようにうっとりと目を閉じた。










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タイトル元ネタはSINGER SONGERの同名楽曲。

キスで5回復ならもっと接触深度高めれば10強は回復しそうです。
そこまで回復すると自覚がありそうだ、と思っていますがどうなんでしょうね。
10そこらじゃ駄目でしょうか。