いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2014年12月31日水曜日

【かもかて小ネタ】メルヒェン・マイネスレーベンス side P

【 注 意 】
・現代パラレル
・タナッセといっしょ/春after




メルヒェン・マイネスレーベンス side P





 無言で隣に座る恋人は唇を引き結んだ。
 辟易している時によく見せる態度。外ならともかく、今のようにタナッセの部屋に訪ねてきた時に見せることは珍しい。だが、
「あの広いキャンパス内、どこをどう広がったのか。お前にあだ名が付いているぞ。それも、姫、とかいう」
 とタナッセが告げた瞬間そうなった。
 だが、
「……私に王子、なぞというけったいなあだ名が付いているからだが」
 と続けた瞬間、表情はすっかり蕩けた。
 つまりそれは私がタナッセの姫ということか、と絵本を閉じ腕を絡め、満天の星空よりきらきらした眼差しで見上げてくる。
 何事かと鳥肌が立ったが、それなら嬉しい。
 言いながら袖をめくれば、成程普段は白く滑らかな肌が荒くなっていた。大根がすり下ろせるかもしれないだろうと笑う彼女にタナッセは苦笑を返し、
「お前、こっちのけったいな言われようには何も思わないのか?」
 一瞬で墓穴を完成させる爆弾を落とした。
 瞬く間に彼を見上げる少女の頬が白から変じれば、掘った穴の深さに見合うだけの砂糖攻撃が待っている。タナッセが一撃で自身の埋葬準備を行った通り、たった一言で彼女はその穴を埋めきった。
 もちろんだ、タナッセはあの日からずっと私にとっては王子様みたいな存在なのだから。
 頬を恋人と同じ色にして固まる彼の腕に、彼女は一層身を寄せてくる。柔らかな二つのかたちや相も変わらずこの家に来る時だけはやたらと短いスカートから微かに覗く素足がぴったりくっついて、余計に彼の硬直は長引く。タナッセがようやく現実に復帰したのは秒針が一回転した頃だった。
「はは、はっ、離れ、は……柔らかい!!」
 という言葉と共に。
 呆れを含んだ表情で更にどちらも押し付けられたのは言うまでもない。
 そして、タナッセを誘いかけてきた。
 王子様に、お姫様のように抱き上げられて運ばれたいのだけれど、と。
「…………。……おい」
 眉根を寄せても、とうに何度もその誘いに屈した経験のあるタナッセはよくよく分かっていた。
「……なら、一度離れろ。この体勢ではどうやっても無理だろうが」
 自分が彼女という“お姫様”に勝てないことが。
 彼女の黒い眼差しは“王子様”を映したまま、腕を解放する。
 じっと見つめ続けるその背と膝裏に腕を差し入れたタナッセは、立ち上がる前に一つだけを言うことにした。物語の王子なら己の姫にてらいもなく言うだろう一言を。彼にはまだ、あれこれ理由を付けなければ言うこともままならないそれを。羞恥心は否めないが、自分の姫なら嬉しいと、ずっと王子のように感じているなどと告白されては、その程度応えられねば逆に恥であると、言い訳をしながら。
 囁いた直後、タナッセは少女の身体を抱き上げた。どのような反応をしたか知ってしまえば、やはりどうしようもなくこみ上げてくる恥ずかしさを振り払えないだろうと分かっていたからだ。それでも腕の中、彼女はやけに舌足らずに肯いた。
 私も、と。
 私も同じ気持ちだ、と。










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タイトルは……某PSPゲームのネタバレ案件(検索すれば即バレ)。
side PはパラレルのP。

みんなにはずっと黙ってたけど……私、
王子と言ったら姫だし、
姫と言ったら王子だし、
つまりそれ書かないと死ぬ病に掛かってるんだ(厨二恋愛系童話脳症候群)。
リタントでは古典では見かける扱いぐらいならともかく
王子と姫のネタはドストレートにはしづらいので現代で。

あと、
起承転結など存在しないかのようなダラダラいちゃらぶいい……。
いい……。
というパッション。

ちなみに「春after」とありますが肝心の「春」はまだありません。
時期を逃しました&書き途中枠で。