いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2014年10月13日月曜日

【かもかて】黒いこどもの正体は

「神の業、人の業」の切っ掛け。
 何度も書いていますが、せっかくなので作中描写(外伝含)をなるべく引用してまとめてみました。
 ……自分で書いといて「コレどこの描写でそう確信したんだっけ?」とか忘れるので。あと、「何この解釈どっから出たの?」とも。
「かもかて」の選択肢による多数分岐はホント地獄だぜ。
 まぁ多分これでも抜けが多いです。根が面倒くさがりな上うっかり者なのでどうにもなりません。あと記憶力も良くない。あと(略)。




 起点は母親が印持ちであること。
 一層思考を深めるようになった転機は、赤児の頃から見続けてきた従弟も印持ちであったこと。
 しかも、その従弟に無自覚のうちに恋心を抱いてしまったこと。
 そこに父親のこと叔父のことが絡まっている。
 ……と思っています(2014年10月13日現在)。

 なので結果的に表面上にウェイトを占めているのは無自覚に惚れて無自覚にギッタギタに振られて、つまり一切合切向き合わず逃げ続けてきた恋心の向かう相手なんじゃないか、とかさっき思いついたことです。えぇ、さっき。

 ユリリエの言う「ぐずぐずと腐れ死ぬ心(「初恋」)」の念頭には文脈上ヴァイルしか当てはまりません(自覚無自覚はさておきユリリエ自身もありそうです)が、相も変わらず無自覚に未練たらたらなタナッセにも当てはまると考えているので。これもさっき(略)。

 たとえ主人公が一切の交流を拒んでヴァイルイベント皆無だろうとも、タナッセ愛情及び友情におけるキーキャラクターは、やはりヴァイルでしょう。
 もしヴァイルがタナッセの初恋でなかったとしても同じだった筈と考えています。

 今程イベントにおけるウェイトは占めていなかったでしょうが、やっぱり「実の弟のように大切で、家族同然だけれど印持ちで、けれど印故苦しんでいることを目を逸らしつつも分かっている」というのはそれだけで大きすぎる。
(まぁ、ヴァイルに初恋してないと主人公相手に吹っ切れてる気もしないので、この場合神業起きたとしてもゲーム本編で可能だったのは友情ルートだけだった気もしますが)




「「私は……母に相応しい息子になりたいんです」/口にしてしまえばそれは、叶うことのない望みだと思い知らされる。完璧な国王のただ一つの汚点が、印が顕れなかった自分という存在なのだ。玉座を継げない自分が認められることなどあるはずはなかった」
「「子に、相応しいも何もないよ。例えヴァイルの額に印がなかったとしても、私にとって大切な息子であることに変わりはない」/「母上はそう思ってはくれないでしょう」」
(外伝「八年前、七年前、そして一年前」第一話六節)

「(ヴァイルをどう思う?に対し“邪魔”と答える主人公に)……だが、気に入った。/しばらくその心は隠しておけ。/(中略)それが望みを叶える近道だろうよ」
(「玉座を望み」座ってみる→邪魔)

「馬鹿げている。/印持ちの感覚にはうんざりだ。母上もヴァイルもお前も、何も分かってはいない」
(「似た者同士」頑張ったから当然orまだまだ→そう思う)

「お前なら、同じ印持ちだ。奴のことも良く分かるんだろうさ」
(「祝福の徴」)

「(名声低くヴァイルの代わりに王になれはしない主人公に)少しなりとも、待つものではなかった。/さっさと決断しておけば良かった」
(「神の業、人の業」名声50未満の場合)

「以前から思っていたが、どうも不気味な奴だな、お前は。/その突然の出現といい、行動といい……今なら信じられんでもないぞ、お前に関するある噂がな。/(中略)お前が神から遣わされた判定人だ、という戯言だよ」
(「詩人の正体」印愛20未満)

「貴方の存在が知れた時の、あの子のはしゃぎようったらなかったわ。/(中略)それに反応してどんどん腐っていったお馬鹿もおりましたけど、(略)」
(ユ「あの子の想いは」)

「お前の……お前の存在を知った時から、嫌な予感しかしなかった。/(中略)王は一代に一人。/他に並び立つ者はいない。/ははは、有り難き神のお恵みだ!」
(ヴ「裏切」ver.Aかつタ好愛35未満の場合)

「(ヴァイルととうとう決裂した一件に関して)自分が関わると、ヴァイルは傷つく。それが良く分かってしまったのだから。ならば、この距離はむしろ好ましいのかもしれない。ヴァイルもそれを望んでいるのならば、尚更に」
(外伝「八年前、七年前、そして一年前」第五話十二節)

「私には実のところ何の力もないが」(「詩人の名」)
「(自分と主人公が付き合うことに対し)色々と釣り合いというものがある」(「告白」)

「何の背景もなく出てきて、印を得ているお前が憎らしかった」
(「雨の中の遭遇」好愛35以上かつ“…………”)

「どうしてお前なんぞの額にそれがあり、私の額にはそれがないのか。/そんな、逆恨みだ。/八つ当たりだ。/(中略)それを得ることは幸せを得ることではないと、身に沁みて分かっていたのに。/王になりたかった訳ではない。/(中略)ただ……赦しが欲しかったのだと思う。/ここにいても構わないのだという、赦しが」
(「最後の日」愛情ルート)

「ヴァイルだけなら我慢もできた。/正統なランテの裔、資格は自分と五分といってもいい。/奴にあって自分にないのは、ただ単に運が悪かっただけなのだと納得できる。だが、もう一人。/しかも、貴族でもない代物の額に。/あの印が」
(二次創作キット直接制作サンプル「あなたがやってくる」)




 母親にもヴァイルにも一定の劣等感と不理解と苦手を持ちつつも、やっぱり二人とも大切。
 母親の消極的な自殺は察しつつも、何か口を挟めることではないと感じている(質問企画)、嫌われてはいない様子だが(外伝の抱擁)、何しろ息子として不出来な存在であるのだから。
 少なくとも王になることを心底から望んでいるとは言い難いヴァイルはどうにかしたいが、直接関わって良いことになった試しがない。
 でも、自分が王になりたい(≒印が欲しい)かというと、そうではない。昔は欲しいと思ったが、母の苦労やヴァイルの苦痛を見続けることになって、羨ましく思う気持ちは残っているが無邪気に望めない。
 だが、惰弱な父親に似ている自分にはなんの力もない。それこそ、腕力面ではいくら分化して間もないとはいえ男性を選んだのに、未分化の子供に負けるぐらい。精神面でも母親やヴァイルには勝てない。王配にも向いていない。
 そんなところに王の交代要員として現れるはずの印持ちが、何故か同い年でやってきた。それがどういう意味を持つのか。

 愛情ルートだと、それを剥奪出来るという魔術師がおり、ヴァイルの役に立つ可能性も不利益になる可能性もある主人公は、どちらかと言えばいかにも問題のありそうな存在だった。
 今ではさほど欲しくもない忌まわしい印が自身の額に現れ、責任や義務を負う覚悟が出来る程度に。
 しかも、印が自分の身に宿らずとも、主人公の身から消えれば、どれだけ表面を取り繕おうとも少なくとも一石を投じる結果には成り得る、と考える程度に。

 そして。
 最大限上手く事が運べば、うるさく囀る貴族どもは黙らせることが出来て、ヴァイルは王に成らず済んだ上同じ印持ちとして支えることも吝かではなくなり、母親も印持ちの息子を誇りに感じてくれるかもしれず、怪しい子供は放逐出来る。

 けれどもどれも叶いそうにはなく、本当にただの田舎の子供が偶さか二人目であっただけならば、本当にただ厭味な男に敵対していただけならば、本当にただ一人で地位を築く困難に対しそんな男と手を組んでもいいと考え努力し続けていただけならば。
 これは、いかにも酷い状況だったし、行為だった。
 が、何故かあれだけやらかした人間に、あれだけ嫌な部分ばかり見せた人間に、九死に一生を得たばかりで寝台の上の子供は告白してきた。
 告白?
 告発じゃない?




 ……タナッセ視点としてはこんな感じでしょうか。
 まぁここ以降は特に選択肢で主体となる感情が変わると思うのでここまで。第一、これだって友情経由やヴァイル交流(友情)パターンには対応していないのに。
 しかし、あの辺で急転直下ラブコメ入りますよね。どんがらがっしゃん選択肢だと特に。

 あ、あと、「神業」の説得失敗パターンは何を参照してるのか分からないので、そこ曖昧です。
 というか、どのみち印の消失ないし移転問題にタナッセが関わっているのは即座に広まるでしょうし、トッズルートで起きる内乱エンドに近い何かになりそうな気もします。あれよりは随分陰湿且つ水面下のものになりそうですが。
 まぁまつりごとからは逆本面に全力ダッシュしていたから、もっと考えが甘いような気もする。

 まあそれは置いといて。
 行為を諦めればうちの主人公が反転して告白して評判いい領主か王配になれますんで、タナッセさんには宜しくお願いしたいところ。
 友情ルートもオススメおすすめ。




 ところで、友情版「雨の中の遭遇」だとタナッセは「この城も、神も、私も、大嫌い」なんですよね。
 愛情版「最後の日」では、「場所(=城)」「潜む奴ら」「流れる空気」が嫌いで、自分の「居場所はなかった」。
 この差がたまりません。




 更に余談。

 以下、タナッセにかなり優しくない解釈なので、不愉快を与えてしまう可能性あります。よろしくお願いします。

(色々へたれだからこそタナッセ愛情や友情の道があるしエンディングの爽快感もあるので、決して貶す意図はありませんが……書いている人間の性格というか性根がアレなので、どうにも文章がきつくなります)



「死ぬかも! でもいいよね!」言われておたおたし出すタナッセが、ディットン行っても王子様だから想定甘くて結局支援受けまくり生活が公式でデフォのタナッセが、大内乱の予想とか出来る気がしません。
 追い詰められて思考が閉じ気味か、意識的無意識的さておき都合の悪い可能性を排斥して思考したか。
 いずれにせよ良い結果だけを考えていたんじゃないでしょうか。
 言い方は悪いですが、正のご都合展開だけを。

 外伝読んでても、結構わざとらしく自分を騙して逃げるので、「なんかあっても印持ちの母上やヴァイルなら大丈夫(自己暗示)」してたような気がします。
 嫌な言い方すると思考停止というか、思考放棄というか。
 まぁ友人ゼロで人付き合いほとんどなくて、しかもまつりごと回避していたタナッセはしょうがない部分も大きい。
 大丈夫だタナッセ、母親も遊ぶ余裕すらない家庭があるという認識がなかったりするし(リ「訪問の予定/弟の想い出」)。思考の穴の大きさが違うから慰めにならないけど。

 そして、そういうのを止められないから、デフォルトエンドロールだと、要は出奔すれどヤニエの弟子にはなれずディレマトイ=タナッセと公表も出来ず母親にはもう自分は大人だと言ったにも関わらず自活出来ず、の三拍子。

 愛情や友情エンドでは、未来嫁や初めての親友を得て少しだけ視野が広がり、そういう悪癖を少し止めることが出来た印象がイベントやエンドロールから垣間見えるのがいいですね。
 そこから先どうなるかは、本人(プレイヤーのキャラ解釈と想像の仕方)の胸先三寸で。

 愛情で片が付くのは印持ち絡み(ヴァイルへの感情含)のアレコレメイン、友情で片が付くのは誤解絡み(父親、己の名を伏せて詩を書いていること)のアレコレメインなので、ゲームエンド時における問題解決レベルを至上とする考え方前提ならば、詩人フラグON友情経由愛情エンドが完璧なんでしょうかね。
 実際アレは達成感が半端じゃなくて好きです。やりましたよ一心同体!


閑話休題。
 まぁ全ては胸先三寸胸先三寸。
 解釈がたくさんある作品は、作品と受け手の(ある意味)戦いです。