【 注 意 】
・タナッセ友情後(印愛35以上好愛キャップまで→好愛……)
・質問企画ネタ、ヤンデレタナッセ降臨注意当然成人向け
うたかたのアマデウス
タナッセの指が私の身体を這う。
夢見た行為であり望んだ感触の筈のそれを、けれど私は押しとどめようとしていた。
とは言っても、手首は縛られているし、いまだに鍛錬を欠かしていない成人男性にのし掛かられては身を捩ることすら碌に叶わない。自由になるのは口だけ。
タナッセは、違う筈だ。タナッセは、私と同じ好きではない筈だ。どうしたのか、何があったのか。
気を抜けば耳障りな声が発されそうになる。押し殺しながらの問いに、答えは返らない。
「お前、嘘を吐いてはいまいな。経験がないにしてはやけに反応が良いが……自分で慰めていたか」
「っ!」
嫌だ、と思う。
厭だ、と思う。
タナッセらしくない台詞を聞きたくない。何年もなんねんも辛い立場に在り続け、なのに優しさを失わなかった強いひと。どうしてこんな、酷いことをするようになってしまったんだろう。
「……否定しないのだな。こちらだけでなく、」
言いながらタナッセは私の胸の先端を摘み上げる。急な刺激。耐えきれず、声が上がってしまう。
「こちらの感度も良いな。相当いじったか」
次に摘まれたのも、やはり尖ったもの。脚の間、女性を選んだ身体に生まれた排泄には全く関係のない二つのうちの一つ。一瞬前の接触よりも気持ち良くて、今度は声だけでなく腰まで跳ねてしまう。
このひとが好きで、タナッセが好きで、確かに触ってしまう日は何度もあった。会えれば疼いたし、会えない日が続けば寂しさから昼でも耽り、確かに指摘された通りだ。
でも。
けれど。
「……いや。……いや、どうして」
私のせい?
私は何か、彼の今までの堪えを踏みにじる冒涜をしでかした?
考えると胃から喉に、目の奥からまなじりに、熱い固まりがせり上がる感覚を覚える。目の熱はそのまま頬を伝った。我慢しようにも与えられる肌身の愛撫に全身の力が上手く入れられなくて、まるで子供みたいにあとからあとから溢れていく。遅れて破裂した喉の熱は、嗚咽になる。
ふと、タナッセは眉根を寄せた。剥き出しの胸を撫でていた手で、私の額の徴に触れると、その模様をなぞるように指を這わせて……背筋に悪寒にも似たものが走る。自分で触った時とは全然違う心地だ。
「お前と会って。お前と話をして。――親しくなって。乗り越えたものと、そう思ったのだがな」
平坦な調子。だからこわい声。
聞きながらも、私は堪えようもない快楽と怖気に、押さえ込まれて動けない身体をくねらせるしか出来やしない。
「……ごめん、なさい」
訳が分からず思考も回らず、中身のない謝罪が飛び出た。
「お前が悪い訳ではない。ないんだ」
吐息一つののち、「あぁ、だが、そうだな。あぁそうだ。羽筆が使えずともお前には口があるのだったな」
怖気の原因が今度は髪飾りを引っ張った。蝶結びの髪飾りを。そうすれば、それはただの細長い布地になる。タナッセは私を喋らせたくない。なら、その布をどうするか。どうすればいいか。理解出来るのに理解したくない。
果たしてそれは口の中に丸めて押し込まれた。
「お前がもう何も語らなければいい。そうすればもうしない。こんな……愚かな、下劣な行為なぞ」
タナッセの言に反して、硬く盛り上がったものの感触がある。けれど行為の中断云々やその硬さよりも気に掛かることがある。聞きたいのに、もう訊けない。
私が詩を書くのが、書いたのが……この前持っていった初めての本が、あなたを追い詰めたのか。
答えは返らない。返ってこない。
なら、と思う。
なら、もう何も作れないように殺してしまえばいい。こんな回りくどいことをせずに。タナッセの邪魔になりたくなんかない。誰の邪魔にもなりたくなんかない。邪魔になるくらいなら、いらないのに。
けれどそれも伝えることが叶わなず、私は首を振るだけだ。口の中の物がそれで出てくれないかと思うけれど、ちっとも動かなかった。
当然、彼にはただの否定に受け取られたことだろう。こちらの反応を窺うことをやめて、私の身体に顔をうずめてくる。這い回る舌。半端に剥かれた肌身が濡れたざらつきに反応していき、そのたび発してしまうくぐもった嬌声は、体内でいいだけ反響して酷く耳障りだった。
とうとう、爛れた場所にもっと熱いタナッセの硬さが宛がわれた。
好き、なのに。
喋れない口から、勝手にそんな言葉が漏れる。
母音が辛うじて聞き取れるような響きで、自分でも何を言っているのか分からない。笑えてきた。
「莫迦だな、お前は。……お前は莫迦だ。そこは、違うだろうが」
彼の方が苦痛を感じているような表情。声色。
それでも動きは止まらない。彼のものが私の狭い場所を押し広げていく痛みを覚える。ゆっくりゆっくり、入ってくる。
莫迦はタナッセの方だ。ただの脅迫じゃなく、どうしてこんな行為で脅しつけるのか。子供、赤ちゃん、出来たらどうするっていうのか。たとえばそう、手を折って、口を縫い付けて、前王の子の、ランテの血統を使って閉じ込めでもすればいいじゃないか。
分からない。全然分からない。
ただただ、タナッセに激しく揺さぶられている。
タナッセは私を女とは見てくれていない筈が、中にどうしようもなく刻みつけられてしまう。女として扱われた事実が、痛い程に。
もしこのあと、全てを吐き出した彼が冷静に戻ったとして。謝罪されたとして。それを私が受け入れたとして。
もうきっと、どんな詩を書いたってこのひとの影が消えることはないだろう。
痛い。辛い。哀しい。寂しい。
一度親しくなってしまったからこそ、刻まれた傷口は鮮やかだ。
歪んだ表情のタナッセに手を差し伸べたいけれど、縛り上げられた手首はもう痺れきって感覚が失せている。脚も震えて力が入らない。
仲良くならなければ良かった。
仲が悪いままだったら、タナッセはきっと幸せで、こんなことにはならなかった。
タナッセは詩人として大成して、私は――何をしていたのかは分からないけれど、少なくとも追い詰めることなんて、しなかった。
思った瞬間、何かが下腹で弾けた。
それが熱く蕩けたものと気付くと同時、私の視界も意識も真っ白になる。なっていく。
ここで気を失ったら駄目なのに。
ちゃんと、私はどうされてもいいからタナッセのしたいようにして欲しいと、それだけは訴えたいのに。
一度発表してしまった本はなかったことに出来ない。
今の私に出来る唯一の購いだ。
喋るなと言うなら喋らない。書くなと言うなら書かないから。
だから、嫌いにならないで欲しい。
だから、タナッセらしくない変なことは、やめて欲しい、好きだから。
……好きだけど。
こんな抱かれ方、一つも嬉しくない。
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質問企画3が元ネタです。
Q.タナッセ友情ルートで、レハトの詩作が上達してタナッセが叶わないくらいになったら、彼はグレオニーのように卑屈になったりするのでしょうか?
それとも友情は変わらずに続くのでしょうか?
A.アマデウスみたいなことになるかもしれませんね。
そんな訳でヤンデレタナッセエロバージョン。
ヤンデレあれば生きていけるって勢いでヤンデレ大好きなんですが、
やっぱりタナッセは病むところまではいかないような気がします。
健全に嫉妬するような。
そんな訳で話の中でも最後微妙に素に戻る感じになり、
ヤンデレ度で主人公が上回る。
でもヤンデレ好きとしては一度くらい
ガチのヤンデレタナッセを見てみたいアンビバレンツ。
ずっとずっと書きたかったので、今回ちょっと発散出来ました。
ちなみに当方主人公は好きな人に酷いコトされると
愛情・友情後限定で耐えられなくなりがち。
自我確立時代なので、今更ながら。
嫌いな人には何をされても基本傷つくだけな感じ、
たとえ性的に踏みにじられようと(某ヴァイル二次はヴァイルが主導なので例外)。
つまりこのあとどうにもならない。