【 注 意 】
・タナッセ友情AorB(印愛35以上、好愛キャップまで)最後の日とEDの合間
・タナッセ視点三人称、巡る想像(配点:青い春)
小さな身体。
頭一つ分以上低い背丈。
初めて出来た、三つ年下の友人。親友。
大人びた言動と、それにそぐわぬ稚気が時折覗く莫迦な子供。
最近は――いや、初めの時分から不可思議な色を湛えた伏し目がちな眼差し。
違う。まださほど親しくなかった頃、涙を零させてしまった頃浮かんでいたものと、最近見せる色彩は異なっている。
目の前に立つ彼の瞳に浮かぶのは、無論後者。
タナッセは知っている。この眼差しを浮かべる人間はそこかしこにありふれていて、けれど自分に向けられるはずがないものだと。
けれど頬に熱が上っていく。
相似である筈。こどもは心細さと初めての友人を得た舞い上がり故にその感情を得た筈で、タナッセとて似たようなものの筈。
断りの文言を思い出しても冷や水一滴に及ばない。
上目遣いのこどもの肩に手が伸びる。壁に押しつける。抵抗はなく、無言でおとがいに手を掛け乱暴に上向かせても、無垢な黒瞳は真っ直ぐ見詰めてくるだけだ。
だから、黙ったまま顔を近づけ、唇を重ねた。
それでも抵抗はなかった。
恐慌状態に陥ったのはタナッセの方で、何か適当な言葉を叫びながら突き飛ばし、走り出し、気付けば朝の寝台で目を覚ましていて、つまり今までの光景は全て夢である。
タナッセは無言で頭を掻きむしった。
あんなことするものか。
あんな、野蛮な行為を。
いやしくも貴族である、王の子であるのに、壁に押しつけて口付けを強要するなどあってはならない。するはずがない。それも、またしても子供相手とは何事か。やはり自分には小児愛の気があるのか。
そこに思考が至ると彼はとうとう掛布に突っ伏した。
それもこれも、あのこどもが悪い。踊りなぞさせられたからあの小ささをありありと夢に思い描けてしまう。告白なんぞしてくるから恋心を持ち合わせてもいない筈のこどもに無体を強いる夢を見てしまう。
最大の問題は、以前の不埒な夢と異なり己への嫌悪がないも同然なこと。
ただひたすらに恥ずかしくて堪らないのだ。
そのうち硬直し続けるのさえ無理と悶絶し始めた。
さっさと出てこい。
タナッセは思う。もし性癖が問題だというのなら、女性を選択し性別の定まった親友を見れば、そう、親友は親友以上の何とも感じなくなる筈なのだから。
万一先の仮定が正しければ新たな問題が生じるのだが、タナッセは少し落ち着く。
唇の感触が、今突っ伏している布団の感触と同様で全く良かった。
あれは友人。
あれは親友。
タナッセの我儘付き合って居心地悪かろう彼の父との席に同伴してくれた、けれど三つ年下の、存外間抜けな恩人なのだ。
だからきちんとしてやりたい。
あの突拍子ないとさえ表現出来る大人と子供の行き来を理解してやれる男を見つけられるように、手助けしてやりたい。
本当に、あのこどもは変なところが抜けている。大人の癖にいまだ自分で手一杯、両親の気持ちすら曲解して独り合点していた卑小な彼に、口付けなど――――
「なっ、何故、何故だ。莫迦か私は! 一足飛び、いや違う飛ぶも何もあいつなぞ好きでは」
とうとう叫んだタナッセの様子を見に侍従が駆け込んできて、「いや友人としては好きでだな!!」
最後の一言だけはっきり聞かれてしまう。
タナッセ・ランテ=ヨアマキスに家族以外の親しい人間は限られて、誰を示しているかは明瞭すぎる。
叶うことなら彼はもう一度掛布に突っ伏したかった。
芽吹き の 季節
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>いやしくも貴族である、王の子であるのに、壁に押しつけて口付けを強要するなどあってはならない。するはずがない。それも、またしても子供相手とは何事か。
平行世界のタナッセが何か言いたそうにしている。
タナッセは感情に蓋して蓋して蓋しまくることをやめれば
暴発系むっつりなのは解消されそうな気がするんですが、
自制と潔癖のないタナッセというのもそれはそれで想像不能です。
印愛好愛皆無で友情後、
その辺の娘さんとくっつくと割と普通に王子様な気もしますが。
要は「生殺し」と「愛しき夢」の反応と外伝小説のイメージが強いんですな。