いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年5月17日金曜日

【かもかて小ネタ】なないろてふてふ


【 注 意 】
・タナッセ愛情B後
・三人称、もちは焼け





 暖色の輝きを舞う女性の姿に周囲の視線は集まっていた。それは別段、彼女が背筋に怖気が走るほど美しいから、あるいは場にそぐわぬ薄汚い田舎者だから、といった理由では――大方の者にとっては――ない。彼女が額に輝く徴戴く寵愛者だから、である。
 王位継承権を放棄した彼女は前年、何を考えたのか取り柄らしい取り柄もない元王息殿下と結婚して彼が得た領地に引っ込んだ。用事があれば夫タナッセとともに登城するも、舞踏会への参加は領地へ去って以降初だった。いっそう注目が集まる。
 注目の的は髪飾りや衣装のリボンを広間の中央で揺らめかせていた。薄衣で出来たそれらは、寵愛者の動きに合わせ蝶々のように舞う。
 小柄な肢体を導く相手は彼女の夫ではない。彼女の腰には先程まで夫の腕が回されていたが、勇気ある青年が踊りに誘い出したため、レースに包まれた手指も折れそうな細腰も、その歳若い彼が捕まえている。端で見ている貴族らは蛮勇の成否を賭けたものの、存外すんなり夫妻は離れてしまった。顔全面に「下心」と記されていたので夫の方が言いくるめて追い払うと大半は予想していたものだが。寵愛者が篭りを開けた直後の舞踏会から似たような事例はあり、いずれも鉄壁の守りであったたものが、どうしたのか。
 ゆったりとした曲調にかこつけて、青年の動きはもったいぶったものだった。おかげで彼女は足を一度つっかけて彼の胸に倒れこみ、青年は無論気遣いしたが、何も肩や二の腕に触れる必要も紅が剥げてしまったのではと唇に触れようとする必要もなく、つまりは動作も過度な接触も故意だ。
 とはいえ、かの寵愛者も黙ってされるがままではない。唇は死守したし、飽くまで青年の不慣れが原因と周りへ印象づける調子を心がけ、更にはそれを基軸とした言い訳でさっさと夫の元へ帰っていった。
 目当ての女性を一度は手中にしたが、青年の結果は芳しくない。しかし同じく下心を顔に貼り付けて彼女を眺めていた一部の男たちは、一斉に青年の元へ寄っていく。どのように誘ったのか、近くで見ての美しさは如何程だったか、倒れ込んできた時当たったであろう身体の感触はどうだったのか、やはり政略結婚なのか――。表面上取り繕ってはあったが、一皮剥けばそのような意味になる質問がぶつけられる。
 だが、肝心の女性は夫と姿を消していた。
 彼女は一人露台へ早足に行こうとする夫タナッセの腕をあらん限りの力で抱きしめ、付いて行くというより半ば引きずられていた。振り払うことはせず彼は進む。広間で舞っていた時同様、リボンがひらひら移動の風に揺れる。
 露台の、護衛たちの目からも死角になる僅かな隙間に着いて、ようやくタナッセは、眉尻が下がり物言いたげな上目と唇を有した妻の顔を見やり言った。
「断り続けるのは外聞が良くないとお前は言ったな。あぁそうだ。全くそうだな。否定はしまい。……だが、あんな者の相手をしないで十全なぐらいに……私が……その、だから」
 忙しく瞬きを繰り返す彼女の、紅が刷かれた唇を親指の腹でなぞると続ける。「だから、お前は――私の傍にいてくれれば、それで……それで」
 下唇に触れられたためか、告げられた言葉にか、あるいは両方でか、彼女は頬を一瞬で紅潮させ、けれど隠すように一層腕への抱きつきを強めそこへ顔を埋めた。ばか、とかすれた甘やかな声音が続く。
 ややあって、すまないが、と前置きがあり、
「……その、頼むから挟むな。いや、わざとでないと分かってはいるんだが我慢がだないや我慢というか……」
 莫迦、と拗ねる声音がタナッセの要請に返ったが、更に彼女は自身の腕の力を強め、柔らかな圧迫を彼に強いた。










なないろてふてふ/せれすたいん










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1)一週間で別れる
2)ひと月で別れる
3)一年は持つ
みたいな酷い賭けがあってもおかしくない。

というか、護衛の目が届かないスペースが有るのは、
構造上の欠陥・配置上の欠陥・わざとに決まってるだろバカ野郎inぐりmonぐり!
のどれなんでしょうね。
あの城結構甘いから配置上の甘ミスとかでも有り得そう。