【 注 意 】
・タナッセ愛情
・三角口で じぃっと見ている 飴細工
編み籠 つや籠 彩糸花網
レースならぬレースが広間中央に見えて、私は脚を止めてしまう。
繊細な糸が編み籠のように折り重なって半円と意匠を描いているように見えるそれは、村では祭ですら見かけたことがなくて、人目も憚らずしげしげ見てしまう。布にしては固そうで、しかも日の光を取り込み反射し艶めいており、加えて皿に乗っている。……食べ物だろうか。まさか鼻を近づけて匂いを確かめるなんて無理で、先に広間へ来ていたサニャのところへ謎の正体を問いに行くことにした。
が、
「……あめざいく」
想定の外から答えが返ってきて、莫迦みたいに単語だけを繰り返した。すると斜め後ろから、耳慣れてしまった皮肉屋の嘲笑と声が掛かる。どうもずっと様子を伺っていたようで、思わず漏らしてしまった響きにこれは好機と仕掛けてきたらしかった。
それからは、まあ、いつも通りの――――
*
レースならぬレースが食卓の上にやってきて、私は前を見つめてしまう。
「……飴細工」
あの日の言葉をようよう口にしたこちらに対し、前に座る、今は随分柔らかい調子で喋るようになった彼は僅かに頬を染めていった。
「……以前物欲しそうに見ていただろう、お前」
人を物乞いの子供のように表現するが、昔と違ってただの照れ隠しだ。知っている。分かる。だから素直に感謝を述べて、私は矯めつ眇めつし、砂糖の香りをいっぱい含んで、それからようやく食べていいのかと彼に問うてみる。そのために作らせた、と今度は小さく笑みを浮かべて言われた。なら、遠慮なく。
甘い物なんて、城に来るまで碌すっぽ口にしたことなどなかった。城からこの、彼が拝領した土地にやってきてからは、城にいた頃より食べられる量が減った。
だから。
だから、私は笑みどころか笑い声を零す。
割った欠片を舌先に乗せると、不純を含まない甘味がまだ味わってすらいない喉まで一気にくすぐった。思わず舌を口内に引っ込め、食事中なのに脚を前後に何度も動かす。いつもならあるはずの注意は来ず、彼から、タナッセから、力を抜いた吐息が届いた。
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気力体力が足らないと舞踏会に誘ってこない辺り、よく見てるよなあと。
グラドネーラに飴細工文化はあるんですかね。
あと、彩糸花網は古いレースに
「方円彩糸花網」というのがあり、それからです。