【 注 意 】
・タナッセ友情B(互いに愛高)、最終結果の決定を意図的に変更
・主人公の母親自殺設定
なので、冒頭にちょっと嫌な気分になる描写が
手を取って輪を出よう、決意を秘めて
考える力が最初に言ったのは、これは僕のせいだ、という一言だった。
忘れ物を取りに家へ戻ったら母が死んでいた。気付いたら私――当時は僕という一人称だったが――は座り込んでいて、言葉にならない声、というより音を不随意に漏らしていた。
辺り一帯血の海だったからだ。
多分、苦しみ抜いたのだろう。自害に使用したと思しき刃物は彼女の手を離れており、口の端にはあぶくが付着していた。涙に濡れた眼球を見ながら名前通り本当に丸いんだなと、私は他人事めいて思いながら、やけにしみじみともう一度思った。
僕のせいで起きた惨状だ、と。
私が自分のことに手一杯でいたからだ。
いや、そう言い訳して、何もしなかったためだ。
まいにちたいへん。こどもだからしかたがない。
忙しさや年齢など言い訳になる物か。実際母は死んだのだ。自死は魔に誘われた所業だと言うが、都合のいい慰めにしか響かなかった。私が印を持っていなければ、あるいは家族三人の団欒を、もっとそれ以上の団欒を築けていたのかともよぎったが――他所に原因を願うのは責任逃れにしか感じられなかった。
私は自分に酔わない。浸らない。そんな資格はない。なくなった。
だから、出迎えの彼が厭な挨拶をしてきた時、思ったのだ。
排斥したいようでいながら同情をも口にする理解しがたい彼の、真意を知ってみようじゃないか、と。
それは叶い、彼とはいっそ親しくすらなった。ただ、何故自分などと親しくするのかという問いは、上手く言葉に出来ないと詳細を話すのを躱し、……けれど何も言わないのは卑怯だったので一つだけ語った。
もし、こうして色々を聞いていたら、聞くための努力を行えていたら、話してもらえていたのなら。何か変わったはずだ、と後悔した記憶がある。
そうして、私は意思の赴くまま、人生初めての友人の背中を未来に押した。
閉じられた城から出て行けと、引き留めたい気持ちをかなぐり捨てて。
だが、彼の母、国王リリアノに言われてしまった。それが再びの始まりだ。今度は私も運命が転がった音を確かに聞いたのだと思うし、――うん、仕方ない、言われてしまったとおり、見透かされてしまったとおり、私はきちんと私の時間を進めようと頑張ることにする。
――――……私には与えられぬ情報も多い。
――――お前もまた、考えてみるといい。
言い訳では断じてない。ないです。私も彼に後押しされたという、ただそれだけだ。
私は早速手紙を送る。果たして返事はやってきた。また会えることを楽しみにしていると、飽くまで友人との再会を喜んでいるだけの言葉を胸に、私はなまけていた神学の勉強に身を入れ始めるのだった。
*+++*+++*+++*+++*+++*
タイトルは境界線上のホライゾンⅡOSTから二曲。
かつて何もしなかったが故に失った後悔の払拭のため、
傷が付こうが痛もうがそれは過去からの罰で仕方ないと考え何かを為そうという話。
しかしなんだ、結果的に補足説明のよーな。