いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年2月1日金曜日

【かもかて小ネタ】荊を解くのは彼だけの

【 注 意 】
・タナッセ愛情B後
・タナッセが思う主人公という存在について、タナッセ視点三人称




 わがままを言う割に、わがままを言わない。
 矛盾する言い回しだが、間もなく妻になる婚約者について、これが彼の忌憚ない評である。
 彼女は彼、タナッセが羞恥で座り込みたくなる要求を頻繁に口にする。ねだる。しかしあまり説教を重ねると明らかに落ち込んでいる表情と力ない声音でで反論してくるので、結局応えてしまうのだが。
 たとえばだ。未分化最後の日に横抱きにしたことが余程嬉しかったのか、篭りを終えてから幾度も頼まれて、その度実行してしまう。抱きしめられると安心すると身を寄せてくれば、背に腕を回してしまう。甘やかしている自覚はある。
 かと思うと、彼女はそういった恋人としての行為以外に対し、驚くほどの無欲さを見せた。
 先日の話だ。邸宅の内装をどうするか尋ねた際、侍従や護衛の選別に意見を求めた際、出された要求はたった一言。
 タナッセが好きなようにして欲しい。
 好みや信頼などあるだろうと言ってみても、比較的好む色味と沐浴は一人で行いたいという二点だけが返された。
 生活全般に対してこだわりがないらしく、食事や衣服に関してさすがに城と同等の代物は用意出来ないと伝えた時も、不満も漏らさず肯くだけだった。衣服などは、女性に分化してから細かい刺繍やレースの付いた華やかな型を好んでいる様子であり、残念の一つも口にするだろうとタナッセは思ったのだが。疑問すれば彼女は呟いた。
 城も村も同じだから。出て行けるだけで、こうして気遣われているだけで。……自由なだけで、もう。
 よく考えれば、彼女はさして裕福でない村の、しかも母子家庭の出なのだ。言葉の端々に浮かぶ村での扱いと合わせれば理由は問わずとも見えてくる。本来、この無欲さこそが彼女の当たり前なのだろう。
 なら、やはり彼女のわがままは受け入れるしかない。それは彼女の甘えなのだから。タナッセに向けられた――タナッセ一人にだけ、向けられた。










荊を解くのは彼だけの










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とくのです。ほどくだと語感がちょいアレなので。
身も蓋もないことを言うと、
なんでこのブログの作品群において
タナッセが大概主人公にさほど口うるさくないのかを
ちょっくら考えてみた小ネタ。
また、塔繋がりということで、「世界の果て」対応タイトル。