いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2023年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2013年1月29日火曜日

【かもかて小ネタ】世界の果て

【 注 意 】
・主人公視点三人称で
 ヴァイル憎悪Aとタナッセ愛情時のエンドロールネタ
・タダでも色々後味微妙なルートが更にビターに
・作中でプレイヤーが存在している故に出来ない行為の実行

・もう一度書きますが、無駄に後味が悪いです
(非常に、ではなく)



 おそらく、誰もが信じはしない事実であろうが、6代国王は2人存在した。
 全てが火にくべられた今、しかし自己満足として書き留めておく。初めの6代は女性であり、次の6代は男性であった。
 ――――貴族の手記より一部抜粋。



 長い年月を掛けて築いた絆には叶うわけがない。
 ひどく在り来たりな結論を思い浮かべ、彼女は手にしていた複数の紙片を机上に投げた。必ずしもそうではないのだが、今回に関しては厳然たる事実が先に浮かべた文言を示していたので。
 だが、一応の責任を果たし続けた時間も終わりでいいかと夜闇の気配を感じながら彼女は一人肯いた。

 既に昔の話である。
 彼女がまだ彼だった過去だ。初めの頃、彼は同い年の未分化の少年と親しく付き合っていた。言うまでもなく、城の未分化など一人目の寵愛者、ヴァイル・ニエッナ=リタント=ランテ以外ない。ヴァイルに両親が不在なこと、しかも片方が物心つくより以前にいなくなり、もう片方は死亡という状況はとても共感を呼んだ。なのにヴァイルは明るく人懐こく、母を亡くしたばかりの彼にとっては暗中の光に似た存在だった。
 ヴァイルの方も彼に親愛を感じていたと、今でも彼女は確信している。
 そして、今なら理解している。
 湖上で約束出来なかった自分が約束出来ないままに愛など告白したから事態はこじれたのだと。
 とはいえ当時は突然の拒絶に驚くばかりで、彼は自分の痛みにばかり目が行っていた。気付くことは出来なかった。
 ――まあ、唐突な肉親の死を身近に感じたばかりの当時の彼が、そこまでの冷静を得られたかは甚だ疑問ではあるが。彼もまた、幼くあったのだ。
 うろたえるより他なかった彼は、次にある人物と両想いになった。今度こそ正真正銘の、思いの通じ合いである。経緯は余人への説明が難しく、おかしな誤解を与えうる流れではあった。ただし彼とその相手、ヴァイルの従兄であるタナッセ・ランテ=ヨアマキスの間には誤解なく愛情があると互いに信じられ、将来を誓い合った。幸せと言って良かっただろう。
 最早どうしようもなくこじれ、彼の弁明どころか話も聞いてくれずに立ち去るヴァイルが内々の継承の儀で感情を破裂させるまでは。

 全ての仕事を終えた彼女は、仰のいてゆっくり大きく、そして静かに息を吐き出す。
 脳裏に常にあるのは自業自得の四字。けれど今日でおしまいだった。
 リリアノたちが、特にタナッセが率先して探していた存在は見つかったという。男性を選択したというヴァイルは、さて、一体どのような姿に成長しているのだろうかとふと思いを馳せるが、やはり彼女の心には苦いものしかやってこなかった。
 ……ヴァイルを特に心配していた二人のうちの一人、リリアノは二年前に暗殺者に殺された。随分多くの暗殺者が送り込まれながらもいずれも弾いてきたというのに、死んでしまった。
 だから、余計に彼女は現状を続けるしかなかったのだが。
 外には大きな月。窓は開け放たれたままだ。雲は一つも広がっておらず、星は天の全てで輝いている。絶好の、と言えた。
 露台に出ると風はなく、ここ数日の雨の気配などどこにもない。
 たった二度でとは情けないと呟く声は、おかげで彼女の周りで留まった。
 しばらくの間。
 夜の少し冷えた大気は動きを見せないまま過ぎていく。
 けれど沈黙の曖昧さを打ち破る動きは急に起きる。微動だにしなかった彼女は勢いつけて露台の手すりを乗り越え、暗闇を切って風を生んだ。一度ついた勢いは、それでも鳥の軽やかさには及ばなかったらしい。まるで彼女の好みと異なる過剰なまでの装飾が乗った重苦しい衣装と共に、こどものような身体は下方へ引きずられた。










世 界 の 果 て










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タイトル元ネタ:『少女革命ウテナ』38話。

タナッセ殺害所感ではありませんが、
「当人は自業自得としても、周囲が迷惑という話」(この場合の当人=主人公)。
「逃亡や死や損失は、当人よりも残された傍人の方に重くのしかかるのだよ」 (機甲都市伯林1巻)
メタ視点だとヴァイル憎悪B・Cのエンドロールがあるので
いや案外一年足らずでいいとこ行ったよ主人公、となるのもありますが。
まああれヴァイルに莫迦な行為を止めさせたいという心配も含みでしょうが……。

柔らかいけど実は硬いものを持っていて、
そして環境のせいで芯が頼りなく支え(=離れない約束等)が要るのがヴァイル。
(あるいは自分が王様である必要性を感じられるだけでも大きく違うのでしょうな。
まるで関わってなくても主人公が来てエンドまで辿り着けば篭り超えてくれるし)

堅いけれど実は柔らかいものを持っていて、
そして環境のために芯も固いが折れる時はパッキリ行くのが主人公。
(図太いように見えるし自身でもそう思っているので、
曲がりなりにもわざと子供やってる自覚があるヴァイルとは強さ弱さの発露が異なる感じ)

みたいな解釈。

ある意味当然のことながら、
「かもかて」で主人公の自殺選択肢はありません。
が、近い選択肢はあって、
「緊急の手段」なんかが分かりやすくそれです。
そして先日の質問企画3(=公式)において
主人公でも場合によっては籠り中衰弱死の可能性が言及されました。
で、妄想が一回転した結果がこれです。
なので少し前の小ネタの「永遠があるという城」同様ウテナ引用タイトル。
だからなんだ系の話は二次創作の華。

実際、設定した気質や印象度によっては
ヴァイル反転憎悪→他キャラ愛情へ→ヴァイルと決闘して勝ったら出奔された、
でも既に厳しいし、
加えてタナッセ愛情とか体力気力半減中で戦うから
ステータスによっては勝ったのに酷い数値になるしというかなったし、
おまけにタナッセはヴァイルを探しに行ってしまうので
篭り中からしてメタクソだろうとは思う。

ヴァイルは反転憎悪Bが大好きなのですが、
なんというか……反転憎悪Bネタより先に愛情で何か書きたい所存。