【 注 意 】
・タナッセ愛情ルートで主人公の「愛しき夢」
・最初は愛情ルート版の愛しき夢と友情ルート版の愛しき夢を
二次創作キットでやろうと思ったのですが(中略)小ネタとしてアップ。
・そういった理由から、ちょっと普段と違った書き方になっています。
下唇をなぞる指があった。
タナッセの大きな手の、やはり大きな親指が私の唇をなぞっている。
真剣な彼に思うのは失礼だろうが、唇なんて触って楽しいだろうか。私にはよく分からない。
未分化だからかもしれない。
「……何を言っているんだ。お前はもう……その、女性になったではないか」
言われて気付く。胸が膨らんでいて、纏っているのは裾広がりの女性服だ。
寝台にタナッセと並んで座っているのだ。
……いつの間に篭りを終えたんだろう、私は。
悩む私の顎を、先程までは唇に触れていたタナッセの右手が上向かせる。
「しかしその、なんだ……。これが、正式な口づけということになるのか。以前のものは――、あぁ、すまない。今喋ることではないな。……目を閉じろ」
よく分からない状況だ。
分からないが、けれど彼の言うことに嫌な感情は芽生えない。
だから目を閉じる。
ふわりと空気が動く気配があって、柔らかくあたたかな感触が唇に触れた。
地下湖であった一瞬の触れ合いを想起する私は、頬に熱が上がる自分を感じる。
ただ、あの時はなかった感覚も身体の奥にあった。
「少しで良い……、口を開け」
その通りにすると、湿ったものが唇に触れ、次いで僅かな間からそれが入り込んでくる。
舌だ、と冷静に考える部分がある。
でも、口内をまさぐる湿った熱に気持ちのほとんどは絡め取られていた。
上あごを、歯列を、撫でるように移動していき、そのたび身体の奥の不可解な感覚が強まっていく。
感覚は、本当に不思議なものだ。
気持ちいい、と、こわい、が混ざっていてどうしようもない気分になる、おかしなもの。
舌は最後に私のそれに絡まった。
表も裏も、絡まり方を変えて撫でさすられ、……逡巡を少しずつ遠くに押しやりながら、 私は自身の舌でタナッセの動きを真似てみる。
すると、彼の舌も応えるように動きを変えた。
嬉しいと、そう思う。
どうしてか息は上がっていくし、おかしな感覚も同時に強まっていくのに、そんな風に思う。
何かに縋りたい気持ちが湧いてきたのは、それが不安を誘ったからかもしれない。
両手でタナッセの衣服を握りしめる。
彼はこちらの顎に添えていた手を離し、私の後頭部と背に腕を回してくれる。
幸せだ。
ただ、本当になんでなのだろう。タナッセはそのままこちらの身を寝台に横たえた。
そして口を離す。唾液が輝く糸を引いたが、それにも身体の……特に下腹部の熱さは募っていった。
「……その、だな。本当に最後までしてしまうが……いいんだな」
反射的に肯いた。
よく分からないが、嬉しくて幸せな行為を最後までする、というのはどうにも魅力的に感じて。
ふと、そんな私の頭の中に遠くから声が響いた。
――知っているはずだ、と。
――でも、知らないはずだ、と。
いや、それこそ真実わけが分から――――
「…………ん」
目覚めた。今日もよく晴れ渡っていた。
目覚めた瞬間、一気に先程までの様々に対する理解がやってきて私を飲み込んだ。
夢だ、あれは。
夢で、自分はあんな……あんな…………言葉を濁してしかし言い切るが、はしたないことをタナッセにさせたのだ。
あの夢は、私の願望だろうか。
だとすれば羞恥で何度も死に絶えることが出来る。
夢の中とはいえ、私はタナッセを都合のいい妄想に使ったのだから。
不幸中の幸いなのは、“最後”に行く前に目を覚ませたことだろうか。
村にいた頃目撃しかけただけで終わったおかげか一応の知識しかない私は、まあどのみち“最後”はあやふやなままだった気もするが。
でも……しばらくタナッセと顔を合わせることが難しい気がする。
布団を頭まで被って私はしばらく恥ずかしさに一人身悶えた。
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タイトルはCoccoの楽曲から。
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