いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2015年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2012年12月15日土曜日

【かもかて小ネタ】おうさま おうはい こどもさま

【 注 意 】
・タナッセ愛情A数年後、三人称
・二人の間の子供が(台詞も名前も選定印の有無もないが)登場




おうさま おうはい こどもさま



 子供が生まれた時、彼と彼女は決めごとを一つ作った。
 正確を期するなら、言い出したのは六代国王であり妻である彼女で、無理でない程度にと釘を刺したのが、王配であり夫である彼――タナッセである。そして今日、彼女は決めごとを守るべく月が太陽へ変わりきる以前から仕事を処理しだした。
 陽光が地平をくまなく照らす頃に残っていたのは、謁見の予定及びそれに伴って持ち込まれる新規事案に頭を悩ませるぐらいだ。しかし全てを迅速に、時間は一度もおさせずむしろ巻き気味にこなしていく。何しろ食事休憩すらまともに取らないのだから、至極当然とも言えたが。侍従達は働き者に過ぎる王に口を差し挟む。だが、この日の彼女が聞き入れた前例は今までの四年で一度もなかった。今年も同様である。
 果たして、太陽が月へと移り変わりきるのを待たず、王は全ての判断を終え、至急の対応も捌ききる。決めごとの時刻まで間もないと知らせる鐘が鳴ったのは、ほぼ同時。慌てて彼女は王らしい華やかな衣装を引きずり走り出した。向かう場所など言うまでもない。夫と子供の待つ部屋へ行くのだ。

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 待ちくたびれてぐずり出した子供をなだめ叱りながら、タナッセは彼女が華奢な身体を覆う長たらしい衣服を重そうに鬱陶しそうにしながら廊下を走っている頃だろうと考えていた。普段あまり共にあれない母と、何に気負うこともなく長時間いられることに喜びすぎる二人の子は、あまりに早くから待ちすぎなのだ。遅くなる可能性はあれど、早くはならないだろう。――子供が生まれて四年、遅れた試しなどないのがおそろしいが。とはいえ、彼も今日の日のために各所へ掛け合うなどして仕事量は出来うる限り減らしてもいるのだが。
 ともあれ、子供がぐずりだしてすぐに彼女はやってきた。お誕生日おめでとう、と幅広のリボンに口を閉じられた一抱えもある袋を抱えて。
 毎年まいとし、馴染みになってしまった光景だ。袋を受け取る頼りない子供を愛らしく感じ、差し出す妻の笑顔を愛しく思いながら、かつての約束をタナッセは思い返していた。
 子供が生まれたその日、疲労からか少し青白い顔の彼女は会話の途中で小首を傾げた。タナッセはリリアノと親子らしいことをした経験が薄いと聞いていたので、これからのこを少し心配している、と。そして彼女は言ったのだ。典礼が神殿や王城の……公的なものだけなど誰が決めたのか。
 つまり、今日この日を二人の子供が生まれた、誕生した記念の日にしようと、彼女は提案してきた。一年後の、二年後の、あるいはもっと先の同じ日を、ずっとずっと三人で祝っていこうとタナッセと眠る子供に笑って言った。光景は彼の眼裏に自然と浮かんで来て、彼女の手を強く握り、握り替えされて――そうして五年目の今日この日にも、違えられずかつての決まり事は執り行われている。早めの夕食を常より少し豪華に、けれど子供の好みに合わせて食べ、思う存分遊ぶ。無論、警護の観点から部屋の外へ出ることはかなわないが仕方のない話だ。
 しばらくして子供が船をこぎ始める。毎年変わらぬ楽しい時間の、終わりを告げる動きだ。来年の今日を気ぜわしく尋ねる子供をタナッセと妻は二人で寝台に寝かせ、微笑んだ。もういらないと子供が言うまで、彼と彼女はずっとずっと、続けていくし、続いていく。大切にたいせつに感じているのは、何も子供だけではないのだ。おやすみ、と眠たげな声が目を閉じた。










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立ち位置色々落ち着いてから出来た子供、というイメージで。