いわゆるフリーゲームに関する感想や二次創作メインに投稿しています(2015年現在)。取り扱い作品:『冠を持つ神の手』

2012年12月10日月曜日

【かもかて小ネタ】黒い羊

【 注 意 】
・婚約以前のタナッセと主人公をそれぞれ
・タナッセ視点三人称と主人公視点一人称


 
黒 い 羊



 仕方がない。
 仕様がない。
 宿らせた諦めは、そう思うごとに増殖していく。交わされた噂が、与えられた態度が、単純な一言で有機的に連鎖していくからだ。膨れあがり、いつしかこちらを圧するだろう様を彼はその日夢で見た。昔はよく見た下らない夢を何年ぶりかに見てしまったのは、胡散臭い人物が先日やってきたせいとしか考えられない。もう一人の寵愛者だという勘に障るこども。王を目指すと城にやってきた日には彼の母に宣言し、実際こどもの勉学の進捗具合は目を見張るものがあった。貴族界隈や使用人界隈の下らないお喋りへの話題の登り方も随分変わった。あるいはもしや、と。
 彼は――タナッセは朝食を取る手を休め、食材のせいではない口内の苦さを噛み締めた。

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 仕方がない。
 仕様がない。
 心を幾度もよぎる思いは、なるべく言葉にしきる以前に封じ込める。前を向く思考の、進むための奮い立ての、その背後に常にかすめる感情だ。器用に切り捨てることがかなわないまま、私は諦めの膨れあがりを感じていた。昔は、母といた頃はそんな余裕もなく、日々倒れそうになるまではたらいていただけだったのに。寵愛者となってからは少なくとも日々の糧を得るのに生死を思わず済む。ある種の余裕は別の切実を連れてくるのだと、城に向かう鹿車の中で知った。また、心に余裕があろうとも、陰口への腹立ちも、厭味や皮肉への苛立ちも変わらないと言うことも思い知らされた。
 いや――並列して述べはしたが、彼らと彼は大きく違う。
 少なくとも彼――タナッセ・ランテ=ヨアマキスは真っ正面から私に文句を付けるのだ。……それだけはまあ、評価しておくべきだろう。だから今日は先にこちらから退くことにした。朝の広間に彼の姿を認めた私はローニカに朝食を部屋で取ることにした旨を謝罪と共に伝え、元来た方向へ戻り行く。
 朝の時間は大切なのだ。夜の寝台で向き合った厭わしい思いを整理するためには。
 降りそそぐ輝きが爽やかだなど、それこそまるで夢見るような考えだ。










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英語の慣用句なのでblack sheepと書くべきですが、日本語で。
この言葉を聞くと真っ先に『はみだしっ子』のグレアムを思い出す。